白鬼

白鬼都市

ASOBI足りない

Be:18 dai 3 no

自作小説

ガントの問いには、結局答えられなかった。無様にベンチに戻るとあれこれ考えた。
生きる意味とか、死ぬこととか。

もちろん答えは出ない。
ただ、気付いた。
今更すぎるが、皆いずれは死ぬんだ、ということと、
人を殺すための言い訳を僕らは探していたんだ、と。
そして、僕はやっぱり現実と向き合っていなかったんだと。

もういい、と思った。言い訳なんか、道徳と同じでどうせもう、役に立たない。
するべきこと、これからのことを考えることにした。
馬鹿みたいに興奮したって仲間を失うだけだ。
僕たちはこれから殺しをする。そこに正解があるはずがない。

野性の動物と同じように、守りたいものと自分だけを守るために他を狩るしかない。
僕はそこに、動物との違いを1つ加える。サバイバルを終わらせるという目的を。

答えはもう、出た。どうせ死ぬならやれる最大限をなりふり構わずやろう。



始発列車が到着すると愛香を起こして3人で乗った。
座席に着いても、列車が発車しても僕たちは無言だった。
ガントがその空気に耐えられなかったようで口を開いた。

「愛香はもう、嫌か?」

「ん?…」
愛香が何が?、といった風に答える。
【もうこの惨酷な現実は嫌か?】とガントが訊いているのは分かっているはずだった。

「今から向かうシニアタウンは老人がたくさんいる街だから、交渉すればかくまって貰えるかも知れない」

「んー…」

「これから俺らが敵に回そうとしてるのは、銃も新資源も持ってる国だ。
愛香をお荷物扱いにはしたくなかったけど、相手が国となると、
皆で仲良く生き残ろうってだけじゃ、うまくいかないかも知れないんだ」

「…」
愛香からとぼけたような雰囲気がなくなる。真剣に考えているようだった。

「シニアタウンだったら、絶対安全なの?」
僕がガントに訊ねる。

「連れていくよりはな。俺たちが仲間を集め出したら国は必ず勘付く。
体内に埋め込まれたやつも、ゴーグルもその手助けになるしな。可能性は100%だ。
比べて、シニアタウンは老人で出来てる街だから、殺したがりも自ら入ろうとはしないだろう。
そのうえ、かくまって貰えたらほぼ完ぺきに安全だろ」

「たしかに…。愛香はシニアタウンにいろ」

言うと愛香は俯いた。しかし、愛香はどうしても守らなくてはならない。

「あたし、強くなるから…」

「ダメ」

「なんで!」
噛みつくように言って来る。

「危ないの」

「やだよ…。なんでひとりにするの?…」

「1人じゃないよ。他にも人がいる場所だってガントも言ってるだろ」
愛香の問いはとても悲しかったが、ここで黙ってしまうわけにはいかなかった。

「知らないおじいちゃん、おばあちゃんなんてやだもん…」

「諦めろ、愛香」
愛香の方を向くのをやめて僕は言った。

「馬鹿!大っ嫌い!」
視界の端で愛香が真っ赤になって怒っていた。また泣きだすのかも知れない。

【シニアタウン、シニアタウン】
放送がなり、列車のスピードは落ちていく。


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