ファイブスターズ(仮)4-5
「すまんが少し明かりを消してくれんかの?」
「え?良いけど何で?」
「暗くないと夜目が効かんからの」
「あっ、思い出したわ。了解っ」
バルガスの真意を理解したリルルは、ランタンのシャッターを閉じる。
「…所々に脇道が見えるが…多分掘った土を置く場所じゃろうな…ここは一本道じゃ」
「一本道?」
バルガスの言葉に、リルルは再びシャッターを開けて問う。
「うむ」
「…じゃあ、急がないと色々とまずいわ」
「どういう意味だ?」
「理由は後。とにかく先へ行こうよ」
そう言うや否や、リルルは先に駆け出した。
「あッ、オイ待てッ、一人で先走るなッ」
「ですが彼女の言うとおりです」
「…ッたく、しゃあねェなッ」
一行も慌てて彼女に続いた。
辿り着いた先は両開きの扉。
耳を澄ませば、祈りの声が微かに聞こえる。
そのお陰か、バルガスの鎖鎧の音に気づかれてる様子はないようだ。
「…」
先頭に立つリルルは無言で一行を黙らせて、扉を調べる。
鍵も罠もないのだろう。
すぐに彼女は、傍らに立つチャーリーに、
『蹴り開けても問題ないわ』と目と仕草とで訴えた。
チャーリーは力強く頷き、そして扉を蹴り開けた。
「!?きっ、貴様らは!」
そこはまさに神殿の広間と呼んでも差し支えないほどの部屋だった。
手前には黒いマントを纏った男性が三人。
そして、信者達に説法していた時と違う衣装-やはり同じ黒マントに鎖鎧-を纏っていたクリルがいた。
手には黒い液体が滴り落ちる曲長剣。
彼の奥には祭壇の様なものに寝かされている少女。
極めつけは一番奥の壁に大きく描かれた、所々線が欠けた逆五芒星。
-それは混沌と自由を司る暗黒神ファラリスの聖印である-
「…それがテメェらの正体かッ!?」
「…ここには信者はいない。ならば隠すこともあるまい。
いかにも私達はファラリス信者だ」
「!?」
説法していた時とは裏腹に、怖気が走る邪な笑顔でクリルは言った。
「何が目的だッ!?」
「知れた事。この儀式を完成させて、
頭上にある忌々しいファリス神殿を汚し、大いなる災いをもたらすためだ!」
ゆっくりと片手半剣を抜きながら問うチャーリーに対し、
クリルは半ば熱狂しながらそう答えた。
そのやり取りの中、リルルは気づかれないように手にしたランタンを床に置く。
「そのような事は断じてさせません!」
「ほぉ…。貴様ら、この小娘の命がどうなっても…ッ!?」
ファリシアの毅然とした言葉に、
クリルは祭壇の上の少女に剣の切っ先を向けようとしたその刹那。
人と人の間を素早くすり抜けたリルルが、少女を祭壇から引き摺り下ろし、
広間の片隅に移動して彼女を庇うよう立ちはだかる。
「…」
あまりの事に口をパクパクさせるクリルを余所に、
リルルはクリルに挑発する仕草をしつつ、
「遠慮はいらないわ!みんな、やっちゃって!」
「必要ねェかもしれねェけど、例の、よろしく頼むぜ」
チャーリーの言葉に、ファリシアは深く頷き神聖語で呪文を唱える。
そして四人-特にクリルからは一際暗い-“邪悪なる気”を確かに感じ取った。
「汝らは邪悪なり!聖ファリスの名に代わり、貴方を-斬る!」
「うぬぬ…小娘風情が…かかれ!忠実なる僕どもっ!」
主の命に従い、黒マント達は無言で立ち上がり、曲剣と小盾を構える。
そしてチャーリー達も同時に武器を構え終えた。
そして、戦いの火蓋は切って落とされた-
グチ聞くよ
2010/05/14 11:25:30
急速な信徒の獲得を成しているのは、
クリルの説法もあるのだろうが(?)、黒マントの「下僕」が幻術の香を焚くとか、
呪文を唱えているか。
本格的なバトルの始まり。
そして、クリルの真の目的は…
ラト
2010/04/30 06:52:32
や。センスイービルの呪文の最も正しい使い方ですね。
これが決まると気持ちがいいんです。
しかし、リルルは良い仕事してますねw