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ラト

なに描こか?なに伝えよか?

北の少年 砂海編 18

自作小説

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;

感想のコメントはとても励みになりますです^^v



( (ジェン!!))
二重に聞こえる異なった男性の声が聞こえたような気がして、ロヴは作業中の手を止めた。
あわてて後ろの方を見たが、作業に夢中になっている治療魔法士の後ろ姿が見えるばかりだ。
二重に聞こえた声の片方は、ラルムの声のようだった。
だが、ラルムはここにいない。
カイルの後を追って行ってしまった。
彼の声が聞こえるはずはなかった。
「何だ…?気のせいかな」
首をひねりながら、また薬草の仕分けを始める。
「ロヴ、それが済んだら包帯用の布を準備してくれ。その後はお湯を沸かしてほしい」
治療魔法士は薬草の調合に専念しながら、ロヴに次々と指示を与えていく。
仕事を矢継ぎ早に与えることで、余計なことを考えなくてすむようにとの心配りからだった。
それをありがたく思いながら、少年は作業を進めていく。
あれこれ悩むよりも、体を動かしているほうがずっと気がまぎれた。
指示通りに包帯用の布を準備して、仕分けした薬草のぞばに整えた。
さて、お湯を沸かすために水を汲みに行こうと、建物の外へ出た時だった。
(ジェン、聞こえるか、ジェン!)
ロヴは驚いて、あたりを見回した。
建物の入り口から漏れる灯りで、かろうじてあたりの様子が伺える。
自分以外には、まわりには誰もいなかった。
なのに、今度ははっきりと声が聞こえた。
さっき、二重に聞こえたような気がした声だ。
一人はラルム、もう一人は聞いたことのない男性の声だった。
その聞いたことの無い声が、ジェンに呼びかけているのだ。
それも焦ったような、必死の呼びかけだった。
ジェンに何かあったんだろうか?
ロヴの心に、漠然とした不安が広がってゆく。
何故か、アルバの都で初めて会ったときの、彼女の様子がロヴの脳裏をよぎった。
春の日の昼下がりの柔らかな陽光の中、小型の草原馬を連れた、何故か首に銀の襟巻きを巻いた女戦士。
無造作に束ねた金茶の髪と、灰色の目に優しげな光を宿した彼女の笑顔。
不安でたまらなくなったロヴは、心から強く叫んだ。
「ジェン!」
会いたい、今すぐ会って彼女の無事を確かめたい。
そう思ってラルム達が向かっていった方へ走り出そうとした時、腰につるした短剣が仄かに光り始めた。
驚いたロヴは、短剣の柄を握り締める。
それと同時にロヴの脳裏に、ジェンの姿が浮かんできた。
肢体が透けて見えるような、白の薄物を身にまとったジェン。
その衣服は水に濡れて、彼女の体にべったりと貼りついていた。
むき出しの左腕と、わき腹が真紅に染まっていた。
右手には、黒くぬめったような刀身の剣を握り締めていた。
そして、彼女の全身からは、逆巻く炎のような鮮やかな気が湧き出している。
「ジェン…」
脳裏のジェンは、その炎を身にまとったまま、何かの大きな黒い影に向かって跳躍した。
空中で両手に剣を持ち変え、黒い影に向かって大きく振り下ろす。
その一撃は、見事に相手の眉間を直撃していた。
そのまま地面に舞い降りた彼女の体から、鮮やかな炎は掻き消えてしまった。
ぐらりと彼女の体が揺れて、剣を杖代わりにしてその場に跪く。
その姿にたまらなくなったロヴは、ジェンに向かって叫んだ。
「ジェン、どうしたんですか?ジェン!?」
その叫びと同時に、脳裏の映像は見えなくなってしまった。
短剣の仄かな光も、もう消えてなくなり元の短剣になっていた。
「ジェンに何かあったんだ、、それを短剣が見せてくれた?」
ロヴは繊細な装飾の宝剣が、何の変哲も無い短剣に変化した日のことを思い出していた。
あの時、自分が強く望んだから、短剣は不思議な力を発揮して今の姿に変わったのだ。
多分今回もそうだろう。
ジェンに会いたいと強く望んだから。
だからその姿を見せてくれたんだ。
「じゃあ、ジェンは・・・!」
ロヴの視界に、何かを抱えて走ってくるラルムの姿が見えた。
「ロヴ!怪我人だ!」
走りながら、ラルムが叫んだ。
「ジェンが怪我をした!手当ての準備を!」

  • ラト

    ラト

    2010/05/21 00:20:32

    キジトラさま
    コメントありがとう^^
    戦闘シーン、楽しめたようで安心しました。実は苦手かもです^^;
    プロのお仕事振りは、あれこれ周りのプロフェッショナルを参考にしています。
    実際の傭兵ってどんなんかな?って思いますがw
    さて、ロヴの成長しだいで短剣も答えてくれるはすなのですが…どうなるかなw

  • キジトラ

    キジトラ

    2010/05/21 00:02:30

    短剣は、まるでロヴ君のしもべのようですね。上手く使いこなせるようになるのかな??
    戦闘シーン楽しかったです!傭兵達のプロのお仕事と思考がよく見て取れたので。
    途中まで、カイルが人狼よりもジェンの方が危険人物みたいに認識しているのには
    ちょっと笑いましたが…wそれだけ相棒の実力を信じてるって事なんでしょうね。

  • ラト

    ラト

    2010/05/14 23:51:35

    シンさま
    この短剣は、重要なアイテムですからw
    目だっていただかないとw
    ロヴが割をくっているかもしれないけど^^;

  • シン

    シン

    2010/05/14 22:17:32

    どの登場人物よりも「短剣」の存在感があるね♪
    「モノ」を見せる商売をしている人間には勉強になります。

    あ、もちろん、話のつづきも  気になりますよ^^

  • ラト

    ラト

    2010/05/14 21:35:31

    momokaさま
    ロヴの応援ありがとう^^
    頑張ってくれる・・・はずですよw

  • momoka

    momoka

    2010/05/14 20:58:08

    ロヴはすごい力を持ってますね

    短剣もすごいけど

    これからはロヴが大活躍するんだろうね
    楽しみです♪

  • ラト

    ラト

    2010/05/14 15:19:22

    だあくさま
    やっと、ロヴくん帰って着ました。
    しばらく、彼が活躍予定です…のはずです@@;

  • だあく

    だあく

    2010/05/14 14:46:48

    ロヴくんはこんな感じに見えていたんですね~
    強く願うと 剣は答えてくれる・・・ 頼もしいです^^