現代版・竹取物語(後編1)
約束の1週間後。1人の求婚者は、沖菜家に求められた物を持って来ていた。
求婚者にはそれぞら違う物を求めた。
武雄は唯一やって来た求婚者に本物かどうか確かめるため出すように言った。
やって来たのは画家だった。求められたのは、世界で1番価値のある絵画だった。画家は自信ありげにピカソの書いた絵を差し出した。本物なら50億円は確実にする物だ。さっそく本物かどうかの鑑定が行われることになった。
正直な話、画家は沖菜家を嘗めていた。どうせこんな田舎物に絵画の価値などわかるわけがないと思った。それにそんな大金を出してまで結婚をしようとは思わなかったし、月代をコレクションの1つだとしか思っていなかったため贋作を持って来ていた。贋作については知り合いの画商に頼み、無名だがかなりの腕前の人物に書かせていたため、そう簡単には見破られないと思った。
だが、その考えは甘かった。鑑定のために部屋を移動すると、そこにはテレビ出演でも有名な鑑定士と美術評論家が計4名もいた。画家は狼狽した。
なぜこのような人物がいるのか。その理由は簡単だった。月代は何度も芸能事務所にスカウトされており、その関係で業界では有名になりつつありスカウトはできないが、美人の月代と交友を持とうとする人物がでてきたのだ。この鑑定士達もその中の人物であり、月代の頼みに対しても、少なからず下心を持ち忙しいスケジュールを強引に調整し快諾していた。ただ、さすが有名な鑑定士。見る目は確かで、贋作をすぐに見破った。
こうして有名な人物によって贋作を見破られた画家は、評論家によってこのことを雑誌に書かれて、世間の信頼を失ってしまった。
では、他の2人はどうなったのか。
まずはIT企業の社長。求められたのは、不思議な国のアリスの初版第1刷。書籍でIT企業とは関係なかったが、世界中に活躍の場を持ち日々情報を相手にしている商売をしている人物ならということだった。
社長はすぐに部下に命令して手配させた。社長はこれで安心して、ラスベガスへ豪遊をしに行った。
そこから帰って来たのは、約束の日の2日前の夕方。もう手配は済んで、遅くても当日の正午までには本が届くと思っていた。が、その考えも甘かった。社長は知らなかったのだ。世の中に出回っているこの本の冊数を。有名な話だが、不思議な国のアリスの初版第1刷は48部しか現存しないのだ。探せば見つかるだろうが、とても1週間では足りなかった。
社長は怒り狂い、なにがなんでも探し出せとどなり散らした。そんなとき、社長室の電話が鳴った。怒りが静まらない社長は乱暴に受話器を取った。
初めは電話口の声を理解できなかった。それが理解できるようになるには5分は掛かった。その電話は午前の重役会議で社長の解任を決定したというものだった。
理由は会社の金を私物化し豪遊していたためであったが、社長は自分のいない隙に好き勝手をしたことを抗議し、無効だといった。それに対して重役は株主の承認も得たことを言い、顧問弁護士も重役の擁護した。
社長は完全に敗北したことを悟った。
とここで話は終わらない。追い討ちをかけることが起きたのだ。会社に警察が乗り込んできたのだ。横領やインサイダー取引が発覚したらしかった。
なので、約束の日は取調べになり欠席することになった。
次に呉服問屋の若旦那。求められたのは1億℃にも絶えられる素材で出来た衣装。若旦那は意気揚々と母親にこのことを伝えた。母親はすぐに常連客の声を掛けた。老舗の呉服問屋というだけあって、常連客は1流大学の教授夫人や時代劇スターであり、熱に強い素材や加工に詳しいと思った。
しかし、この考えも甘かった。若旦那達はこのことを相談された教授にあっさり無理だと言われたのだ。
なぜだと鬼の形相で言い寄る母親に、教授は苦笑いで簡単にまとめて言った。
「この地球上で1億℃の炎を出そうとすると、炎を作り出すのに地球より大きい機械が必要になるのですよ」
その言葉を聴き終わる前に、若旦那は泡を吹いて倒れてしまった。
こうして3人の求婚は、破滅とともに崩れ去ってしまった。
その夜、武雄は満足な結果となり上機嫌だった。
とはいえ、少しやり過ぎだったような気もする。月代はこの状態をどう思っているのだろう。
そう考えた時だった。武雄の部屋に月代がやって来た。
「こんな時間になんのようだい」
「実はお話があるのです」
「話?」
武雄はなんだろうかと思い話を聴いた。その話は想像を絶するものだった。
簡単にいえば、月代の話は以下のようなものだった。
近々、自分の本当の親が迎えにくる。武雄と陽子に言うのが遅れたことは申し訳ないと思っている。それに今までの恩を考えると本当の親とはいえ、2人のもとを簡単に離れようとは思えない。だから、この星で結婚をして落ち着こうと考えたのだと。
そしてこの星という表現を使ったのは、自分が宇宙人だからだ、と。