承前

　
　そうして長い間メジヘラーイソは、たまにやって来る発作を撃退してくれる心強い友になっていた。

　中２の夏頃だったと思う。久しぶりに出た発作で、１年振りくらいにメジヘラーイソを使った。学校を休んだ午前中のことだ。

　「シュッ」

　それで息がしやすくなったはずだが、次第にそれどころじゃなくなってきた。心臓の鼓動が激しくなってきたのだ。１０秒後、２０秒後と脈拍が異常に早くなってきた。焦った私は近くにいた母を呼んだ。

　私の訴えを聞いた母がそばに来る。「聞こえるよ」。私の心臓の音が目の前の彼女にも届いているようだ。二人で焦る。



　しかし５分後くらいには嘘のように落ち着いた。一時は、普段の３倍近くまで上がった脈拍数は程なく正常に帰した。メジヘラーイソは薬箱の奥深くに仕舞われた。

　そして私の小児喘息時代は有り難くも終りを告げた。



　思春期を迎え、素敵な女性が目の前に現れても、あの時ほど心ときめかせたことは無かった。　　　　ﾅﾝﾉｺｯﾁｬ



　（補足）
　検索で「メジヘラーイソ　心臓」を調べると、同様の体験や記述がみられる。あの時死んでいたら有用な資料としてこの中に『１４才男子死亡例』として私が登場していたかもしれない。
　それはそれとして、ひとつの時空軸の出来事なのだろう。