不思議駄菓子屋と中2の夏 其参
ふわぁ。
このとき、夏とは思えないほどの、冷たい風が吹いた。
首筋を流れていた汗が、冷たくなって気持ちがよかった。
が!
そんなことを、感じている暇などオレにはなかった。
「あっ!コラ!待ちやがれ」
そんなオレの声もむなしく、麦わら帽子は青い空の中に消えていった。
「…兄ちゃん。」
緑也の瞳にはもう涙がたまっている。
「あっ!コラ泣くなって!」
さっきみたいな風は、もう一切吹かず、また暑い熱気と、
聞きなれたミーンというBGMが流れ出す。
これで、泣かれたら面倒なことになるぞ。
「泣くなよ!なっ!オレが取りにいってくるから。」
「う・・・ん」
緑也は、まだ納得していない様子。
ちくしょー。こいつ、動かないつもりだな。
ココは、唐草の駄菓子屋の前の下り坂。の途中。
この坂の横には、オレの通っている学校『蒼公中学校(そうこうちゅうがっこう)』
略して、蒼中(そうちゅう)が、建っていて、グラウンドでは、野球部が練習している。
『カキンッ』
見事な音がして、なだめていたオレも、泣きそうになっていた緑也も
ぱっとそちらを向いた。
その瞬間、オレは瞳を見開いた。
野球のルールは、一人の友達のせいで知っていた。
そいつに何回も付き合わされた。
そいつはいつも打っていた。
でも、今オレは間近でみている。
そいつより、もっと高い
そいつより、もっと強い
そいつより、もっと速い
ホームランを・・・。
「すげぇ」
口から、勝手に感情があふれ出していて、
心から、心の底から、すご・・・
「ざざざざざざざざっ!」
いきなりこちらに走ってくる音がした。
スパイクで土を蹴り、
高く、強く、速いホームランの球が、
土へ落ちる寸前に、そいつは飛び込んだ。
そいつの、グローブの中には
ボールが、 入っていた。
「唐草!」
オレは、耐えられなくてそいつの名前を呼んだ。
「おお!ササ!どうした?」
いつもと、変わらない馬鹿。
いつもと、変わらない口調。
それは、いつもと変わらない友達だった。
「すごいぞ!まじで!」
「そうか?ありがとな。」
あいつは、練習着についた土を荒くはたくと、
味方へと、ボールを投げ返した。
「がんばれよ!練習!」
そういうと、唐草はにこっとした笑顔を見せ、
「おう!」
と元気よく、練習へと戻って行った。
周りは、まだまだ暑かったが、一瞬だけ心地よい風が心に吹いた。
長くなった。
登場人物まとめたやつ、いつか作ります。
かのい
2010/06/19 18:57:42
こんにちは。
とっても面白いです(>▽<*)o
情景がイロイロ書いてあるので
頭に浮かんできます♪
続き楽しみにしてますね☆