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ラト

なに描こか?なに伝えよか?

北の少年 砂海編  40

自作小説

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;


長い長い沈黙の末、人狼はやっとこれだけ言葉をもらした。
「いいだろウ。おまエの選んだ人間のおんナと話ヲさせてくれたラ、すべてヲ話してやろウ」
(ジェンとか・・・俺はかまへんが、なんでや?)
「おまエのような変わっタ共生獣ト共にいる人間二興味がわいタ」
(これだけはゆうとくけどな、妙な真似したらジェンは容赦はせえへんで?)
カイルは立ちあがって、プルプルと身震いしてから人狼に声をかけた。
(ジェンに話してみるさかい、ちょう待っとってや)
そして、静かにその場から立ち去った。
人狼はいつまでもカイルが去っていった方向を、不思議そうにみつめていた。

人狼の閉じ込められた小屋から出て来たカイルは、ケニス夫妻との話を終えたジェンとロヴを見つけた。
ジェンはロヴを抱えるようにして建物から出て来た。
少年の顔色は真っ青で、今にも倒れそうなほどフラフラしていた。
(なんや、ロヴ、どうかしたんか?)
二人のそばに駆け寄って、心配そうに見上げてくるカイルにジェンは笑顔で答えた。
(なに、ただの疲労とケニス氏から精神的揺さぶりを受けたせいだ。それで、頭がぐるぐる状態になったんだよ)
カイルには心の声でそう答え、意識が朦朧としたロヴにはこう声をかけた。
「ロヴ、もうすぐ寝台に辿り着く。それまでしっかり歩け」
足元も覚束ないロヴの肩をそっと抱え込んで、ほとんどの体重を自分のほうへかけさせた。
(ジェンも大丈夫なんか?顔色ようないで…)
(心配ない、食べたからそのうち治る。血が足りないだけだ)
(…あんな、ジェン、そのなあ)
(何か用事があるんだろう?ロヴを寝かせてからでいいか?少しだけ待ってくれ)
(さすが、相棒やなあ。話が早うて助かるわ)
ジェンはにっと笑って、ロヴを宿舎の方へ運んでいった。
カイルも当然のように、その後をついてゆく。
ロヴの部屋はラルムと同室で、用事に追われている彼は今は不在だ。
ジェンはそっと少年の体を抱き上げ、寝台に寝かしつけた。
乱れた髪を優しく撫で付けてやり、額に触って熱がないのを確かめてから、ジェンはその場を離れようとした。
すると眠っているとばかり思っていた少年が、ジェンの胴着の裾を片手でつかんだ。
「どうした、ロヴ?」
「てが…み…じいちゃん」
それだけ何とか言葉を搾り出して、ロヴはポケットからたたんである羊皮紙を引っ張り出した。
ケニスとの会見で渡しそびれていた、ハランの手紙だ。
今まで命と短剣と同等に大切にしてきた、祖父の形見だった。
ジェンは大切な物を扱う手つきで、その手紙を受け取り、胴着の内側にしまいこんだ。
「わかったよ、ロヴ。だからお休み」
もう一度優しくロヴの髪を撫で付けて、そっと頬をなでた。
その手つきは、まるで母親のように優しげでロヴの心を慰めた。
少年ははやっと安心したように、目を閉じて安らかな寝息をたて始めた。
(さて、カイル。人狼がなにかいったのか?)
ジェンはロヴを一人きりにする気はまったくない。
自分か、カイルか、あるいはラルム、常時誰かがついているようにするつもりだ。
ハランの守護魔法が消えうせた以上は、そうするしかないと密に決めていた。
だからカイルの話も、この場で聞くつもりだ。
(せや。あいつはお前と会いたいそうや。そうしたら知ってること全部話すんやて、どないする?)
(話すさ)
ジェンの答えは簡潔だ。迷うことは一切なかった。
たとえ相手が自分を殺しかけたと者だとしても、情報を得られるのなら迷うことはない。
情報収集は敵と戦うために、最も大切な要素の一つだ。
ましてや今度の敵の正体は、ほとんど判明していない。
その情報源である人狼が、知っていることを話すというのだ。
迷っている暇などなかった。
(話して、知っていることを教えてもらう。それだけだ、他になにがある?)
(そうやな、そういうと思ったわ)
(じゃ、さっそく話にいくとするか。カイルはロヴのそばを離れるな。何が出てきてもおかしくない。今のロヴは、狼の前に放り出された仔兎より無防備だ)
(わかったで。ジェンも気ぃつけや)
カイルは返事代わりに、ロヴの寝台の足元に飛び乗って、ゆったりと毛づくろいを始めた。
「行ってくる」
ジェンはそう声に出して、部屋を出て行った。

  • ラト

    ラト

    2010/07/06 19:55:20

    たかりんさま
    いつも感想ありがとう^^
    昨日は寝落ち、今日は残業と病院が長引いて、まだ続きが完成してません^^;

    ロヴはまだ本調子じゃないから、ケニスさんの揺さぶりでそらふらつきますよw
    大人の階段を一段登っただけだからなあ。

  • たかりん

    たかりん

    2010/07/06 19:32:22

    人狼はジェンに本当にすべてを話してくれるのかな?
    続きが楽しみです。

    ケニスのゆさぶりでフラフラになってしまったロヴ。
    まだまだ男前度では、ジェンにはかなわないねっ^^

  • ラト

    ラト

    2010/07/05 18:42:32

    だあくさま
    すっかり保護者のジェンですね^^;
    出来たら今晩遅くに、この続きをアップ予定です、
    寝落ちしてなければやけどw

  • だあく

    だあく

    2010/07/05 14:34:31

    ジェンは 時には 母親の様に・・・ですね^^
    人狼が 何を話すのでしょう・・・  気になります!!

  • ラト

    ラト

    2010/07/04 19:06:41

    momokaさま
    ありがとう^^
    がんばりますよ^^

  • momoka

    momoka

    2010/07/04 16:29:02

    ラトさんは

    天才です~(^_^)v

  • ラト

    ラト

    2010/07/03 19:48:52

    momokaさま
    ジェンは目的のためなら遂行する傭兵、つまりプロです。
    その辺を書くのが難しいかな。
    私はプロじゃないからwww

  • momoka

    momoka

    2010/07/03 19:11:10

    ジェンも殺されかけた

    人狼に話を聞く勇気

    すごいです~

    これから人狼がどんな?

    秘密をジェンに話してくれるんだろうね(*^_^*)