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ラト

なに描こか?なに伝えよか?

北の少年 砂海編 41

自作小説

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;



人狼がいる小屋はの前には、傭兵仲間の若者が一人、所在なさげに立っていた。
確か最も若い、ルークと言う名の傭兵だ。
年が近いロヴともよく話をしていたので、メルガの護衛として働いているジェンともなじみがあった。
今のところ物音一つしない小屋の見張りは、随分と退屈なのだろう。
空を見上げたり、無意味に体を動かしたりして落ち着きがない。
(これは、丸め込みやすそうだ)
ジェンはそう判断して、その若い傭兵に声をかけた。
「おはよう、ルーク」
いきなり声をかけられて、ルークは驚いたように姿勢を正して声をした方に顔を向けた。
緊張していた雀斑だらけの顔が、ジェンの姿を認めてほっとしたように表情を緩めた。
「ジェン、もう動いても平気なんですか?」
昨日の戦いで死線を彷徨うような大怪我をおったと、傭兵仲間から聞いている。
目前の女戦士は、顔色こそすぐれないが五体満足で動きにもよどみがなかった。
「平気さ。あの治療魔法士の先生はたいしたものだ」
ジェンはとびっきりの笑顔で、ルークの瞳を覗きこんだ。
「心配をかけて悪かったね。お詫びにここの見張りを変わってあげるよ。その間に食事をしてきたらどうだい?まだなんだろう?」
「え、でも、ぞんな。悪いですよ」
「気にすることはない。幸い、怪我のせいで一時的に護衛の任務はないから暇なんだ。何かしていないと時間を持て余すしね」
ルークはしばらく宿舎の方と、ジェンの顔をを見比べた。
ジェンはここぞとばかりに、さらに笑顔を浮かべる。
普段のジェンとは違って、女性らしい柔らかな表情に、ついにルークは降参した。
それに、お腹がすいているのも事実だ。
「すみません、それじゃ、飯を食ってくる間だけお願いします」
そういってちょっと頭を下げてから、ルークは駆け出す勢いでその場を去っていった。
(傭兵としての自覚は、まだまだ甘い。私ごときの甘言で丸め込まれているようじゃあね。修行しろ、青少年)
ルークに対してあまりな考えをうかべつつ、ジェンは小屋の中にそっと身をすべりこませた。

日が高くなるとともに、砂海のオアシスの村は、気温が高くなってきた。
小屋の中もむっとするほど温度が上がり、獣臭い匂いが充満していた。
普通の女性なら顔をしかめそうだが、ジェンは気にすることもなく、人狼が捕らえられている牢のそばまで近寄った。
金の目を見開いた人狼が、驚いたようにジェンの姿を見つめていた。
「おんナ、ほんとう二きたのカ?」
まるで信じられない物をみるように、大きく目を見開いて首を持ち上げている。
鉄格子の窓からさす日差しの中で、改めてみる人狼は予想以上に痩せていた。
こげ茶色の肌に、真っ黒な剛毛の髪。
剥き出しの足や腕にも、同じような毛が生えていた。
痩せた顔には、爛々と光る金の目だけが目立つ。
軋む声で話す時は、尖った犬歯が見えた。
両手と両足は封呪の縄で縛られ、何とか自由に動かせるのは頭だけのようだ。
「ああ、お前が呼んだから、私は来た」
ジェンの答えは簡潔だ。
ただ、事実を述べただけだ。
人狼に敵意も恐れも嘲りも示すことはない。
ただ、自然に対峙しているだけだ。
その答えと自然な態度が、人狼の気に入ったようだ。
「おまえモ、おまえヲ選んだメタモルフもおかしナ奴ダ」
笑いを含んだ口調で、金色の目をすっと細める。
その様子は、まるで野生の狼が気持ちよさそうに目を細めたような感じだった。
「いいだろウ。おれヲここに向かわせたのは、ロウ・ゼオンの黒の魔術師ロウ・バルトといウ」
人狼は驚くべき力で半身を起こして、その場に座り込んだ。
「おれヲ育てた者ダ。俺二ロウ・ヴェインの臭いを覚えさせて、このオアシスで待てト命じタ」
「それはいつの事だ?」
「去年ノ今ごろダ…」
金の目を閉じて、人狼はため息をついた。
「長いこと待っタ。砂海で待つのハ、俺にモ堪えル。やっと臭い、みつけテやってきたの二。ロウ・ヴェインなど知らないとおまえハいウ。腹がたって怒リデ目がくらんダ」
「だから、変身したのか?」
「そうダ。おんナ、お前、よく戦っタ。だかラ話ス」
どうやら、思っていた以上に長い話になりそうだ。
ジェンは腰を下ろして、人狼の正面で胡坐をかいた。
真っ直ぐに、人狼の金の目を見つめる。
その瞳孔は、野の獣のように底が知れなくて、何処までも沈んでいきそうなほど深いものだった。
「聞こう」
ジェンは、頭を真っ白にして、瞬時に全ての情報を聞くための準備を整えた。

  • ラト

    ラト

    2010/07/10 23:15:41

    だあくさま
    お話のメインは最初の予定通りに進んでいます。
    しかし、サイドストーリーは広がってきた。
    これをキャラの暴走といいますが、一番はじけたの人狼かもしれないなあ。

  • だあく

    だあく

    2010/07/10 22:50:14

    なんか 人狼が抱えてきた物が ゆっくりはがれて行く感じがします^^
    どんな 話が聞けますかね^^

  • ラト

    ラト

    2010/07/10 14:26:16

    たかりんさま
    私は性善説派ではなく、信じたい派かなw?
    どんな生命も生まれたときは無垢だからなあ・・・

    そう思っているんだよ。甘いかなあ?

  • たかりん

    たかりん

    2010/07/10 11:29:15

    長い間かけて育てられた、悪としての心。
    でも正しく、優しい心に触れて溶けるのは、すごく早かった。

    人狼の本来もっている心の優しさを感じて、どんどん好きになっちゃう!

  • ラト

    ラト

    2010/07/08 23:56:01

    キジトラさま
    そうですか、てっきり私が消したものと思い込んでました。早とちりでしたね^^;
    さて、人狼がかけられた魔法は、まだ解けてないのではと思います。
    記憶を刷り込まれてるいますから、なかなか消えないかもしれません。
    ジェンと人狼は命のやりとりをした、好敵手といった感じなのかもしれません。

    敵の中ボスはやはり美形がいないとw 私も動機不順ですねw

  • キジトラ

    キジトラ

    2010/07/08 23:21:55

    こんばんは^^再びお邪魔致します。
    いえいえ、さっきのコメントは自分で消したんです。
    書き込んだ後でちょっとあれっ?と思って読み返したら、1話読み飛ばしていた事に
    気付きまして、もう一度きちんと感想を書こうと思っていたんです。失礼致しました。

    人狼を絡め取っていた術は、もう完全に解かれたんでしょうか。
    とりあえず雇い主の事は置いておいて、兵士として生きてきた同じ感覚を持ち、同じ世界の
    一端を見てきた者同士の面会という感じですね。誰よりも解り合える部分があるのかも。
    当面の「敵」となりそうな黒魔術師、一体どんな人なんでしょう。
    美形という事なので楽しみにしています(動機が不純だw)

  • ラト

    ラト

    2010/07/08 22:15:47

    キジトラさま
    申し訳ありません。
    せっかくのコメント、消してしまった…何をしてるんだろう^^;
    ほんとうにごめんなさい。

  • ラト

    ラト

    2010/07/08 22:14:29

    momokaさま
    さて、次回は人狼の思い出話になるのかな?
    ジェンはどういう対応をしてくれるか、作者にもわかりません^^;

  • momoka

    momoka

    2010/07/08 20:22:56

    人狼もジェンを立派な戦士と認めたから

    本当の事を話してくれるんだね♪

    どんなお話してくれるか?

    ワクワクしますね\(^o^)/