ひまわり畑を眺める一匹猫

招き猫

猫はただ、風に吹かれながらひまわりの花を観ていました。
まるで懐かしいぬくもりを思い出しているかのように。

もうひとつの幻想

自作小説

1、再会

俺が彼女と知り合ったのは、もうかれこれ5年になる。

俺がハタチの頃、コンビニでバイトをしていた時の同僚だった。

彼女は看護学校に通っていて、俺はその店のフリーターだった。

俺は深夜の時間帯を勤務し、彼女は早朝6時にやってきて朝の2時間を通学前に勤務していた。

そして、俺も彼女も朝の8時に仕事を上がった。

彼女はそのまま通学し、俺は家に帰って眠った。


俺は彼女が気になっていた。

明るく、弱音を吐かない頑張り屋だったし、大きな夢を持っていた。

しかし、俺の方はしがないフリーターだった。

同じ年であるのに、俺自身が情けなく思えていた。

彼女の学校が休みの日などは、俺はバイトが終った後彼女を誘った。

彼女は俺なんかにも気軽に着いて来てくれ、俺は眠い目をこすりながら彼女を車に乗せて食事などをした。


ある日、俺も彼女もバイトが無かった日があった。

俺は彼女に

「たまには夜に会わないか?」

と言って誘ってみた。

彼女は快く承諾してくれた。

俺は彼女を車に乗せ、横浜にドライブに出かけた。

横浜の海を眺めながら、俺は彼女に告白をした。

「俺と付き合ってくれないか?。」

彼女は俺の目を見ずに、海を見ながらこう答えた。

「ごめんなさい、今は学校とバイトで手一杯なんだ・・・。」

おれはあっけなく振られてしまった。

そのまま、彼女との仲は平行線を辿り、1年後、彼女は看護学校を卒業して仕事に就いた。

俺は相変わらず、同じ店でバイトをしていた。


そして5年の月日が流れた。

その間、俺は彼女とは一度も会う事は、当然無かった。

俺は叔父貴と一緒に事業を立ち上げた。

自動車関連の仕事だった。

仕事はある程度順調に行き、しがないフリーターだった俺も、自分の人生に自信を持ち始めた頃だった。


そんなある日、俺の得意客が事故を起こした。

俺が売った高級乗用車は大破し、その客は病院へ担ぎ込まれた。

得意客である事から、俺は彼が入院した病院へお見舞いに行った。

そして、そこで働く彼女と再会したのだった。

得意客が入っている病室に、患部のガーゼを取替えにやってきた彼女は、俺の顔を見て驚いていた。

そういう俺も、まさかと言った表情だったと思う。

「ここで働いていたのか・・・久しぶりだな。」

「うん、久しぶり、元気だった?」

俺は見舞いの帰り際、ナースステーションに寄って、彼女に名刺を渡してきた。

もう、あの頃のようなフリーターではないと言う自信の表れだったのかもしれない。

「今、こういう仕事をしているんだ。今度電話をくれないか?。」

「そう、わかった、電話するね。」

そう言って別れた彼女は、あの頃よりも輝いて見えた。


大して期待はせずに渡した名刺だったが、2日後の夜本当に彼女からの電話があった。

「こんばんは。この前はビックリしちゃった。」

「俺もさ、まさか君があの病院で働いているなんてな。」

懐かしい笑い声は、俺の気持ちを再び点火させるには十分だった。

俺はあの頃のように、彼女を食事に誘ったのだ。

彼女は快く俺の誘いを受けてくれた。

俺と彼女は再び、時々会って話をする仲になった。

5年まえのアルバイト時代の思い出話や、その後のお互いの事。

そんな会話の中で、俺は再び彼女に傾斜していった。

そして再会から2ヵ月後、俺は意を決して彼女に言ったのだ。

「俺はもうあの頃とは違う。君もそうだ。改めて言うよ、俺と付き合わないか?」

しかし彼女は、うつむきながら首を横に振ったのだ。

彼女は「ごめんなさい」と言った後、こんな話を俺にしてきたのだ。

つづく

  • 招き猫

    招き猫

    2009/02/19 18:11:28

    KINACOさん
    ごめんなさいの意味は、次の回で明らかになりますよ。
    期待・・・外さない様にしなきゃなぁ。。。

  • 招き猫

    招き猫

    2009/02/19 18:10:10

    くぅみんさん
    ごめんなさいには精一杯の思いやりが・・・あればいい。

  • KINACO

    KINACO

    2009/02/18 11:34:09

    なんで「ごめんなさい」なんでしょう。
    期待次号

  • くぅみん

    くぅみん

    2009/02/18 06:45:19

    きっと 「ごめんなさい」には いっぱいの   ・・・・・が。 なのかな・・・・・