選挙のたびに思い出すのは、１０年くらい前に、投票所の前でプロスキーヤーの三浦雄一郎氏とすれ違ったことだ。

　頃は夏だったので、彼は別にスキーを担いでいたりゴーグルを頭にのせてはいず、普通の格好で投票所に来たようだった。

　三浦雄一郎といえばやはりスキーヤーの格好をしていなければいけない。どちらかといえば、ヒゲも多少伸びていなければいけない。悲壮な目をして頂上を見つめていなければいけない。口の周りには軽い凍傷が必要だ。疲れ切った手足を、最後の努力と本能で動かすべきだ。

　ところがその日の彼はコザッパリとしたスーツ姿で軽やかに平地を歩いていた。一瞬、『ニセ物かもしれない』と思ったが、あのクドイお顔は間違いないのだ！　

　数人のカメラマンみたいな人たちがフラッシュをたき、インタヴューらしきことをしていたようだった。


　最近はお見かけしないので、住居を移されたのだろうか。真冬の選挙のときに彼を見たかったなあ。