「時のかけら」

あき☆元綵

ここは「あき☆元綵」(はじめあき)の気ままなプログです。
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創作小説「次期王の行方」1

自作小説

自作小説第2弾です。

ファンタジー小説になります。
魔法とかアクションはないですが、私のお気に入りのひとつです。
同じ世界観の小説を総じて「平行世界」シリーズと読んでいます。

短編なので6回前後くらいで終わると思いますが、よろしくお願いします。

「平行世界シリーズ」

   次期王の行方


――コンコン

扉をノックされる音に気付き、自室で書類の整理をしていた青年、クーデノムは机上から視線を上げた。淡い茶色の短髪が動きに合わせて揺れる。

「…クーデノム?」

返事がないことに少しためらいがちの声が扉の向こうから聞こえてきた。

声の主はよく見知っている友人のもの。

「はい、どうぞ」

その言葉に従って扉を開けて部屋へと入ってきたのは同じ年頃の青年。濃い茶色の長い髪をひとつに束ねたなかなかの美男子。

「まだ仕事してたのか?」

「大丈夫だ。急ぎの仕事でもない」

そう言いながらクーデノムはペンを置くと、机に散らばった幾つもの書類を重ねて片付ける。二十三歳という若さでありながら、数年前から王宮の国王近くに務める文官の地位に就き、忙しい毎日を過ごしている。

「それよりどうした? 相談か?」

「…相談というよりも、雑談だな」

彼、マキセはそう言って慣れた仕草で部屋のソファへと腰を降ろした。

「あれから1ヶ月、まだ何のウワサも聞こえて来ないなぁ」

「……あぁ、そのことですか」

クーデノムは軽めの果実酒をグラス2つに注ぎ、ひとつを彼にすすめて向かいのソファに座った。

「皆さんは、王子探しをやってますか?」

「そうだな。過去の王の足取りを追って、あっちこっちと使いを出してる」

たいして興味なさそうな口調だが、楽しんでいることは明白だ。

「王子が見つかるのは時間の問題でしょうかね」

「さぁ、どうだろうなぁ」

 

ここは大陸の南中にある『賭博の国・クスイ』と呼ばれる小国だ。

1ヶ月前に突然、王宮に仕える臣の文官・武官を集めて国王から告げられた言葉。

それが現在の王都の騒ぎの元になっている。

別に王家だの貴族だのと堅苦しい身分の風習があまりないという、気ままな国であるために、後継者である次期王は王が決定する。

それは親族でも誰でも構わない。

そして現国王の言葉は皆の意表をついていた。

「まず最初に、実は私には血の繋がった息子がおる」

集まった王臣の誰もが初耳!という驚きの言葉を表情に顕していた。

「しかし、そいつは王になるのを拒んでおる」

ざわざわとざわめきが広間一杯に広がっている。

「息子を説得して王になることを承諾させた者には次期王の側近の位を授けよう」

「…ご子息はどこにおられるのですか!?

我先にと質問をする臣下達だが、

「内緒だ」

「は?」

「息子にもこの話は伝わっている。三ヶ月の期間で、彼を見つけ出し説得してみろ」

楽しそうに告げる王に皆、毒気を抜かれポカンとするばかりだ。

「その間で説得できなければ……そうだな……」

王の側に控えていた青年文官に目を留めると、笑った。

「このクーデノムを側近にして次期王を選ばせることにしよう」

「王!?

彼の驚きと抗議の声は広間に沸きあがったどよめきで消されてしまった。

満足そうに声を上げて笑う国王に何も言い返せないまま、クーデノムは大役を圧しつけられてしまったのだった。

                           【続く】

続きがどうしても気になるって方は、検索して頂いたら、どこかで引っかかるはずです(笑)