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ラト

なに描こか?なに伝えよか?

北の少年 砂海編 45

自作小説

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;



「なにが、知る権利はあるだ…狸親父め!」
ケニスへの報告終えて、一旦解放されたジェンは小さな声で毒づいた。
ケニスは穏やかで物静かな態度だったが、いいたいことを縮めたらロヴの秘密を全て教えろだ。
すでに全てを察しているが、本人の口からそうだと言わせたい。
そうすれば不確かな情報は確実となり、ある意味相手の弱みも握れる。
弱みを握れば有利な取引が出来る…まさしく商人の論理だ。
また、それが正しいときている。
ロヴといる限りまたこのような襲撃があるし、より強敵が襲ってくる危険も大きい。
ケニスが全てを知りたいというのも、無理はないのだ。
それが解ってはいるが、なんとも腹の虫が治まらない。
ロヴの意思を確かめたら、二つ返事でケニスに教えてくださいと言うのが予想できるだけに。
昨日からの出来事のせいで、人狼の死から抑え続けた感情の波がジェンの心の中で荒れ狂っている。
握りしめた拳で何かを殴りたい衝動に駆られ、ジェンはその場に立ち尽くした。

ラルム達はルークの報告を受けて、あわてて人狼の小屋へと駆けつけた。
念の為に魔法使いを連れて行くのも忘れない。
食事中の魔法使いを半分抱えるようにして、その場に急行する。
(人狼が死んだってどういうことだ。何があった、ジェン!)
機嫌よく朝食を楽しんでいた彼女の様子が、ラルムの心に浮かんだ。
「とにかく、ジェンさんの様子は変でした。今ごろはケニス様に報告しているはずですが」
不安そうな表情で,ルークはそう言った。
まだ短い付き合いだが、ラルムはジェンの心の強さを知っている。
そのジェンの様子が、ルークに心配させるほどだとは。
彼女の心情を思いやって、ラルムの表情は厳しく引き締まっていた。
小屋の周りに人影はなく、ただ砂海の厳しい陽光が照り付けているだけだ。
ラルムは他の傭兵達に身振りで待つように伝え、一人で小屋の中に足を踏み入れた。
不思議な事に、あれほど充満していた獣くさい臭いが綺麗になくなっていた。
鉄格子の嵌った窓から、陽光が差し込んで小屋の中の様子がはっきりみえる。
鉄格子の向こうで、大きな狼の躯が横たわっていた。
その周りに封呪のロープが散らばっている。
狼の四肢は自由になって、まるで大地を駆けているような形になっていた。
その姿を見てジェンが何を思ったのか、ラルムには理解できたように思った。
傭兵の第一目的は、生き延びること。
生き延びて契約を遂行すること。
『疾風のジェン』は評判どおりの傭兵だ。
それなら、目前で死を選ばれたりしたら。どれほどの衝撃を彼女は受けたのだろうか。
「死んで自由を得たってわけか、お前は」
そう呟くと、ラルムは狼の躯を片付けるため、仲間の傭兵に声をかけにいった。
彼も後を振り向く事はしなかった。

傭兵達は半々に分かれて、小屋の後片付けと人狼の死骸を運び出すために動き出した。
魔法使いが間違いなく人狼は死んでいると保障する。
その死骸は火で焼く事になるだろう。
魔のものは火でもって浄化する、これが常識だ。
(ジェンは嫌がりそうだがな)
ラルムはそう思った。だが、仕方がない事はあるのだ。
この死骸を、バールオアシスの村に埋葬するわけにはいかない。
迷信深い村人たちの反感をかってしまう。
火で浄化して、その灰は砂海に撒き散らして魔を祓うのだ。
その事をケニスに報告するのはラルムの役目だった。
ケニスに会うため彼のいる建物に向かう途中で、ラルムは悄然と立ち尽くすジェンと出あった。
思いつめた表情で下を向き、握りしめた拳が小刻みに震えている。
何かを必死に耐えている様子だった。
(これは…)
ラルムはジェンの中に溜まってしまったものを、どこかに吐き出させなくてはと本能的に悟った。
昨日からいろいろとあった。ありすぎた。
いくらジェンでも、耐え切れないだろう。
それならば、怒らせて吐き出させればいい。
「ジェン、人狼は死んでいた。死骸は焼くぞ」
ことさらに無神経な口調で、ラルムはジェンに声をかけた。
ジェンはさっとラルムの方を振り向いた。
瞳が鋼の色になっている。怒っている証拠だ。
「…んだと」
「魔物の死骸は焼く」
ラルムは事実だけを告げる。
その簡潔さが、ジェンの怒りを掻き立てると思ったからだ。
腹筋を引き締め守りを固めてはいたが、ジェンの一発は重かった。
ラルムは息をとめ、後ろに一歩退いた。
死の淵から生還したばかりの女性の一発だというのに、この衝撃はどうだ。
彼女の怒りの強さが推し量られた。
絶好調の彼女の一撃なら、後ろに倒れこんでいたかも知れない。
「少しは気が晴れたか」
痛む腹部をおさえつつ、ラルムはそう聞いた。
ジェンの鋼の瞳が、いつもの灰色にもどる。
「すまない、ラルム・・・ありがとう」

  • ラト

    ラト

    2010/09/14 20:30:40

    たかりんさま
    ラルムさんから様に昇格してる~w
    きっと彼も喜んでるでしょう^^
    いい奴なんですよ、彼はw

    んで、改めてお帰りなさい~♪
    まったり楽しんでね^^

  • たかりん

    たかりん

    2010/09/14 19:48:57

    さすがラルム様っ♥

    ジェンの強さが目立つけど、ラルムってやっぱり男の中の男だよね!!
    しかもすごく優しいしっ♪♪

  • ラト

    ラト

    2010/09/11 18:15:19

    だあくさま
    ようこそ、お帰りなさい^^
    夏休み、お疲れさまでした。
    ラルムも経験をつんだ傭兵です。
    思いはジェンと同じでしょう。

  • だあく

    だあく

    2010/09/11 15:53:40

    ラルム・・・ ジェンにとって よい理解者ですね。。
    ジェンも これで少しは ラクになってくれるといいです^^

  • ラト

    ラト

    2010/08/07 20:25:03

    momokaさま
    そのとおりです。
    ラルムはジェンの心を思いやって、わざと怒らせたんですよ。
    たぶん、ジェンの気も晴れたはず^^

  • ラト

    ラト

    2010/08/07 20:19:37

    メリーさま
    普段、感情を抑える人が爆発すると、それは怖いですよ^^;
    ジェンもそのタイプのようですw

  • momoka

    momoka

    2010/08/07 20:08:56

    ラルムはジェンの気持ちを

    良く知ってるから

    わざと怒らせたんですね。

    でも、これでジェンの気持ちも少しは晴れたような気がしますね。

    ジェンもすばらしい仲間に囲まれて幸せですね(*^_^*)

  • メリー

    メリー

    2010/08/07 18:55:43

    シェンが怒ると・・・怖ぇぇぇΣ( ̄□ ̄lll)