「時のかけら」

あき☆元綵

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創作小説? 「魔王の森 -森の真実-」1/3

自作小説


新しい創作小説をUPですっ
と言っても書いたのはまたもやずいぶん前ですけどね。
小説と言っていいんかいっていう、散文詩的な描き方で遊んでおります。
意外とこの書き方、ワタシ的に面白かったりします。
短編なので、3回くらいで終わるかな。
もともと掲示板の連載用だったしね。

どうぞよろしくです。


   魔王の森 
-森の真実-



    △伝説の森
 

 遥か遠い昔からこの世界のどこかで魔王の森が生まれる。

 幾度となく魔王が倒されても、数十年、数百年を経つと再び魔王の森は出現する。町を森を異形の姿へ変え、世界を覆い尽くほど留まることを知らない、森。

 魔王を倒せば、森は消滅する。

 昔から伝えられた伝説。

 聖獣と破魔の剣が世界を救う者を選ぶ。

 事実は伝わっていても、真実は伝わらない……  


   △聖獣の選択
 

 大きな争いが起こった。
 国同士が数年に渡って刃を交えた。
 いくつもの城が壊され、数々の文化財が姿を消した。
 そして、争いも下火になった頃。
魔物が出現し、『魔王の森』が発見された。
 被害が拡大し、各国が過去の文献を調べまわって対策を考え始めた。
 しかし、伝説と化してもう処分されかけている過去の文献には、存在したことは確認されてもどこにも森の進行を妨げる方法は記載されていないのだ。
 
 最初は人里離れた場所で息を潜めるように少しずつ成長していった森も、発見されると急成長を始める。
 異形の魔物達の存在に恐れ、不安が世界を包む中、聖獣が現れた。
 
 文献の中に描かれた、魔物が放つ〈瘴気〉に負けることなく抵抗できる存在。
 唯一の魔王を倒し、森を滅した方法として書き記されている出来事と同じ現象。
 翼の生えたトカゲのような聖竜。
 人の大きさほどもない、天の使いとも称される聖竜が一人の若者を選び出す。
 森が発見されてから、もはや数年が経っていた。
 時折現れては人を、街を襲う魔物に抵抗しようと自ら奮い立った者の中から。
 ―
自らを犠牲にしても、世界を救いたいと願う者を。


    
 △破魔の剣 

 今から400年も前のことらしい。
 一番最近に『魔王の森』が出現し、消滅したのは。
 世界の半分が森に支配され、多くの国が滅亡したと歴史書には記載されていた。
 一人の青年が聖獣の導きで『破魔の剣』を手に入れ、魔王を討って世界は救われたのだ、と。
 かつて勇者と崇められた青年の名はダレス。
 聖竜に導かれて勇者の名が付けられた土地へと足を踏み入れた。
「ここが、昔に魔王の森だった場所?」
 確認のために呟いた言葉に返事をする者はいない。
 ただ、それを肯定するように彼の肩に乗った聖竜が翼を動かした。
 何もない、一面の草原。
 自然に溢れ、異形でない小動物がエサを求めて行動する。
 街や村があったであろう土地をすべて呑み込んだ森の痕は人が住めなくなると聞いたような記憶があるのだが……。
 確かに人が住んでいる気配はないが、生活はできそう…というより、適している土地のように見える。
 不浄の地として単に迷信深い人が足を踏み入れるのを躊躇っているだけなのかもしれない。
 とにかく、ここはかつて魔王が居住していたという土地。
 近付きたくないと思うのは仕方ないことかもしれない。
 
 ただっ広い草原を歩くこと半日。
 聖竜の示す通りに進んだ所に、一本の剣が地に突き立ててあった。
 長い間、風雨に晒されても朽ちることなく、美しい刀身を保っている。
 ――破魔の剣。
聖竜と出会って旅をするようになってから、自分なりにいろいろと調べたりした。
 過去の文献で知り得たことは少ないけれど、破魔の剣とは、唯一魔王を倒すことの出来る武器だという。
 聖獣の導きと破魔の剣の両方を手に入れた者だけが、魔王を倒すことができる、と。
 世界のどこかに存在しているが、確かな場所は判らないと記述されていたのだが、かつての魔王がいた…魔王が倒された地に、ずっと在ったのだ。
 剣に近づくと清浄な空気が感じられた。
聖竜は離れて彼の行動を見守っている。
 400年の間、この地を浄化し続けていたのかな、この剣は……。
 手を伸ばして柄を握る。剣は淡い光を放った。
その光は彼の身体を包んでいく。
 清浄な光に包まれて彼は瞳を閉じた。
 身体の隅々にまで光が行き届くのを感じながら。 
               

                                      【つづく】