フリージア

叶わぬ願いはもういらない…14

自作小説

駐車場へ着くと僕の知らないルミの車があった。
 「新しい車買ったんだな」
 「うん、かわいいでしょ?じゃあ、乗って、どうぞ」
 「おじゃまします」
 まだ他人行儀が抜けない。助手席に乗ると、たまらず深呼吸をした。ルミはエンジンをかけて駐車場の出口へ走らせ、まだ料金は無料の時間だったのですぐに車道へと出る。 
 「元気だった?」
 ルミはあっさりと聞いてくる。
 「うん」
 謝らなければならないのに、いざとなると何も出てこない。ルミの問いかけに、うんうんばかり言っている、情けない。
 ルミは適当に車を走らせながら、僕の横顔をチラチラと見、恥ずかしそうに話す。
 「偶然に会うなんてなかなか無いもんだね、街でばったりなんて事あると思っていたけど。別れてから今まで、1度も無かったんだから」
 そうだな、会った事なかったな。それが悔しくてたまらなかった。偶然にでも会うことがあれば、そこに運命が生じる。運命とは心動かされる言葉でもあり、残酷な言葉でもある。今まで偶然にも会っていないと言うことは、それが運命なんだと半ばあきらめていた。
 それでも僕は偶然を望んでいた。偶然でなければ彼女に会ってはいけない、そう感じていたからだ。
 
 ただ、僕はルミに会っていた、夢の中で…
 
 誰にも話せないほどくだらなく、そしてたわいもない夢の話を僕は話し始めた。恥がいもなく。
 「俺は会っていた、ずっと。ルミをずっと見ていたんだ」
 「えっ?」
 「いやいや誤解しないで、こっそり影で見てたとかじゃねえよ。夢さ、夢で」
 「夢?」
 「ああ、いつも何処かでルミと出会う夢だ。その時はね、正直言ってうれしいんだ。会ったその時は夢だって気が付かないから、でもルミと会ったら必ず目が覚める。その時はこう思うんだ、なんで夢なんだって・・・・現実に引き戻される辛さってのは尋常じゃないよ。恥ずかしいけど、俺はまだルミのことが好きなんだなって思い知らされる。でも会いたくて連絡取ってルミに迷惑をかけることはしたくなかったから」
 「…」
 「それが悩んでいたルミを気づいてやれなかった、解ってやれなかった、俺の罰だと思って」
 僕は下を向いた。ルミの顔を見ることはできなかった。
 「ずっと謝りたかったんだ…ごめん」
 繁華街から遠ざかり、二人がよく過ごしていた街並みを車が走る。僕が謝ってからルミは何も言わず運転し、さっと見つけた某ファーストフード店の駐車場へと入る。
 

  • ゴールデンウルフ

    ゴールデンウルフ

    2010/09/02 18:37:03

    マコトさんへ^^

    佳境ですね^^
    あと2回で終わりになります、今日中にアップする予定です

    またあとがきとかも書きますね^^
    お楽しみに♪

  • マコト

    マコト

    2010/09/02 01:41:50

    こんばんは。

    そろそろ佳境ですね。
    潔い成二クンの謝罪に男気を感じます。
    カッコいいぞ!