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ラト

なに描こか?なに伝えよか?

北の少年 砂海編 49

自作小説

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;



「それが、どういうことか解っているか」
ジェンの声は静かだった。
表情も、瞳の色も、態度もだ。
だが、ロヴは魂の底の底まで、大きな声で問われたような気がした。
『お前に王になる自覚が出来たのか?』
緊張が少年の全身を支配した。
ケニスも、そしてメルガもだ。
ジェンが無意識に言霊を使ったのだ。
ロヴがあまりに真剣な態度で、自分の決意を話したから。
ジェンも真剣そのものの態度で、問いを返したからだった。
言霊に支配された人間達を見ながら、共生獣のカイルだけが悠然と構えている。
(王の誕生の瞬間やな)
金色の目を細め、自分の相棒とその庇護者の少年を見守る。
最初に動いたのはロヴだった。
掠れ気味の声で、だがゆっくりと丁寧に答えた。
「解っています、トーナ国エルザの傭兵ギルド所属、傭兵ジェン殿」
彼は立ち上がって、ケニスとメルガにも話かけた。
「アルバの都、隊商ギルド所属のケニス殿、その奥方メルガ殿」
最後に、ゆったりくつろぐ「猫」のカイルにも声をかけた。
「傭兵ジェンの相棒、共生獣のカイル殿」

正式な呼びかけの後、腰の短剣に手をかけ 戻れ と、強く念じる。
何の変哲もないただの短剣は、空気に溶けるようにしてその姿を消した。
かわって現れたのは、繊細な金の装飾と宝石で飾られた短剣だ。
「我は誓う。この短剣に誓う。我は王として、ロウ・ヴェインとして、ロウ・ゼオンの大地を踏みしめよう」
短剣をすらりと抜く。
それと同時に、刃に刻まれた文字が光り輝く。
その文字は変化していた。
読めない文字のはずなのに、ロヴにはしっかりとその変化が理解できた。
『我は汝が言葉に従うものなり』だった文字は、

『我は、汝、ロウ・ヴェインが言葉に従う者なり』

という言葉に変化していた、
(短剣が、ついにお前を主として認めたようやなあ)
カイルの言葉を聞きながら、ロヴは短剣を鞘に収めた。
そして、目前に跪くジェンの姿に驚いた。
「ジェン、どうしたんですか」
「ロウ・ヴェイン王、私は貴方にこの剣を捧げよう。貴方は王として生きる道を選ばれた。ならば…」
ジェンは自分の長剣を抜いて、刃の方を持ちそのままロヴに差し出した。
「私の剣は貴方のものだ。貴方がロウ・ゼオンの玉座に座るその日まで、貴方を守りぬくとここに誓う」
ジェンは、剣の誓約をロヴに捧げた。
戦士として、剣をもって世を渡る傭兵として、ロウ・ヴェインである少年に、自分の全存在をかけて守ると誓ったのだ。
(受けるがいい、ロウ・ヴェイン。疾風のジェンがお前の背後を守るだろう)
普段のカイルとは思えない口調で、彼の声がそう告げる。
「ロウ・ヴェイン王。私がその証人になりましょう」
「私も証人になりますわ。ロウ・ゼオンの真の王」
ケニスとメルガの2人が立ち上がり、右手を胸にあてて深く頭をたれる。
(2人の証人と誓言があった。1人の戦士の誓いがあった。略式だが王の承認が行われた)
カイルの声が、ロヴの頭に強く響いた。
(ロウ・ヴェイン。新たなるロウ・ゼオンの王がここに誕生した)
「戦士ジェン。貴方の剣を受け取ります」
ロヴは差し出された長剣を、しっかりと握りしめた。
手入れの行き届いた古びた剣は、今のロヴには重く感じられた。
それは、ジェンが自分に寄せる信頼の重さのように思える。
(俺は、この重さに答えなければならない。この重さに相応しい王にならなければならない)
そう、強く強く決意するのだった。

  • ラト

    ラト

    2010/10/19 20:09:03

    たかりんさま
    いやあ、このシーンを描きたいがために、ここまで旅をしてきました。
    たかりんに読んでもらえてうれしいなあ\^^
    これからもよろしくね。
    まだ、先は長そうなので、頑張って書いていきます。
    もちろん、ロヴが王になろうと決心したのは、たかりんの言うとおりだよ。

  • たかりん

    たかりん

    2010/10/19 16:47:49

    うぉぉ~純真な少年ロヴが王となった瞬間だね!
    その場に立ち会えて?幸せです♥^^
    彼が求めているのはモチロン王という地位、権力では決してない…
    民のために強くなる、その瞬間だったんだよね。

    しかしまだ戦わなければならない相手がいるからなぁ…心配です!

  • ラト

    ラト

    2010/09/12 20:08:41

    だあくさま
    やっと、ロヴも王への道を歩きはじめました。
    立ち塞がるのは、あの嫌味な魔法使いです。
    どうなるかは私の腕しだいなんでしょうがw
    頑張りますのでよろしくね^^

  • だあく

    だあく

    2010/09/11 16:21:44

    きゃ~~  ロヴが 急に大人に感じました
    王家の血が そうさせたのでしょうか・・
    力を持つ人が 自覚すると さらに大きな力を発しますね^^
    王位の承認が こんな風にできるなんて 感動です♪

  • ラト

    ラト

    2010/09/08 21:53:37

    らてぃあさま
    描きたかった場面の1つを書くことができました。
    ちょっと、肩の荷がおろせたかな。
    ロヴの今後もよろしく。

  • ラト

    ラト

    2010/09/08 21:53:23

    momokaさま
    長剣の重さは、ジェンが寄せる信頼の重さですね^^
    ロヴはきっとその重さを背負える王様になってくれると思います。
    問題は、私に書ききれるかだなw

  • らてぃあ

    らてぃあ

    2010/09/08 19:53:27

    古の英雄譚のような感じ。
    ロヴすごい。

  • momoka

    momoka

    2010/09/07 20:48:05

    ロヴもジェンに渡された長剣を重く感じて

    立派な王様になる様になるといいですね♪

    素敵な仲間に見守られて幸せですね(^O^)/