瞳の中の少女…3
「まだ通り魔は捕まってないのよ。テストのことより、学校が終わったらなるべく早く家に帰ってくるのよ」
「もうその話はいいじゃない、事件はもう三ヶ月ぐらい起きてないんだし。それに被害者はみんな女の子なんだから、男の僕は関係ないでしょ。それに叔父さんは刑事なんだよ。僕がやられたら叔父さんの恥じゃない」
母は目を見開いて。
「何言ってるの!圭輔さんが刑事だって関係ないわよ。それにおそわれた三人全員があなたの高校の生徒じゃない!先生からも言われているでしょ!」
「わかったよ」
僕は卵焼きとご飯を口にできるだけかっ詰めて、お互いに違う事を心配している両親の目を振りきり、家を飛び出した。
通学途中、先ほど話にでた通り魔事件のことについて考えていた。母親がやたら心配していたが、そうなるのも無理はない。なんせ三人もの犠牲者がでている、それも三人とも僕が通っている県立海沢高校の女生徒だ。幸いにも死者は出ていない、いずれも重傷ではあるが。
一番初めの犯行は今年の4月のことだった。犯行現場はいずれも高校の周囲一キロ圏内、犯人は通学途中または下校途中に人気のない路地で、後ろから後頭部を鈍器で殴っていた。金品は取られておらず、当時ただの愉快犯的なものではないかと世間では噂されていた。
だが最後の犯行が行われてから三ヶ月ほど経つ。もう終わりなのかもしれないと誰もが思い、だんだんと世間が事件のことを忘れていくのがわかる。朝食の時の会話で僕も事件のことを忘れたと母に思わせた、でも僕の頭の中には少量ではあるけれど、事件のことは苔のようにこびり付いていた。
『何が目的なのかな?』
今のところ狙われているのは全て女性、そして海沢高校の生徒。共通点はそれだけで、動機もハッキリしない。僕はサスペンスのドラマや小説は好きなのだ、その中で一番重要なのは犯行動機だと思っていた。だから歩きながら犯人の動機を考えていたのに、人間とは現金なもので、数分後には今日のテストの日本史と英語の事も頭の中に混じってくる。
歩くこと30分、いつも通り学校へと着いた。自転車に乗ればもっと早く着くんじゃないと思うだろうが、単に歩くのが好きなだけだ。外の景色を見て四季を感じる、それを感じるには歩くのが一番と自負しているからである。
今は十月、過ごしやすい気候。穏やかな風が吹いている。澄んだ風は耳から鼻に向けてかすめていく。目を閉じて深呼吸をすると、光が微かに届く樹木の木陰にいるようだ。
気温は暑くもなく寒くもない、テストにはもってこい。通学途中のこの瞬間だけは今度こそ仙道君を抜かし学年トップになれるんじゃないかと思っていた。
教室に入ると、みんな教科書を開いている。こういう姿を見ると焦ってくる。
仙道君は隣のクラスだ、もちろん焦りもせずにどっしり構えているのだろう。
「真田、今日も自信ありそうだな」
声をかけてきたのは友人の桂木。
「そんなことないよ」
「またまた~」
僕が自分の席についてずいぶん時が経つのに、担任の先生がいっこうに来ない。とっくに朝礼が始まっている時間なのだが、さすがにクラスが騒ぎ始める。10分が経ち、先生が慌てて入ってきて開口一番。
「すまないがもう少し待ってくれ、十分後にテストを始める。後は時間を繰り下げるから心配しないように。では」
これだけ言うと、すぐ教室を飛び出していった。
ゴールデンウルフ
2010/09/07 23:32:29
マコトさんへ^^
いえいえ、こちらこそありがとう^^楽しかったです♪
気がついてよかったです、伝言にコメントしてると
上は見えないですからね^^;
ルッチもお世話になってしまって^^
またいつでもお話しましょう♪
今回は事件がありますから^^ドキドキしますね
お楽しみに♪
マコト
2010/09/07 22:57:35
こんばんは。
先程はありがとうございました。
少しですが、楽しかったです。
さて。
今回は少し文体が違うのかな?
重いテーマになるのかしら、などとドキドキしつつ。
次の事件を楽しみにしてます。