瞳の中の少女…11
やっぱり何かがあった様子。深呼吸の後、仙道君は声を出した。
「…1度だけ…あった…」
僕の考えでは、仙道君に好意を持ち告白した女性をストーカーが襲うというものだ。これが一連の犯行の流れなら、必ず仙道君は告白されているはずだ。
「その何かって言うのは、告白された後に起きたんだね?」
仙道君は溜息を吐き、頷く。
「それで通り魔は?」
「いや、通り魔じゃないんだ…今起きているような通り魔事件じゃない。その告白された子に断りの返事をしようとした、その日の朝…校舎の屋上から飛び降りて…自殺したんだ」
「自殺?…自殺した?」
「この話はあまりしたくなかったんだけど、事件に関係するかもしれないのならば…この高校に転校してきたのも、そのことがあってなんだ」
「本当に自殺だったの?遺書とかは?」
その質問にも、首は縦に振られることは無かった。遺書のない自殺。
「遺書を見つけるより、僕のせいじゃないかと学校中に知れ渡ってしまい…もう学校には居られなくなってしまったんだ」
授業開始を告げるチャイムが鳴る。
「そうだったの」
それしか言えずにこの会話は終わった。
顔を曇らせながら、仙道君はトイレを後にする。彼には何か人を遠ざける雰囲気も持っていると思っていたが、こう言うことがあったのか…
思惑とは異なる事実を知り、僕は頭をフル回転させながら教室へと戻る。
今の話で、推理の選択肢は一つ増えかけたに思えた。
それは告白した子が襲われたのではなく自殺(未確認ではあるが)したと言うところにある。
ストーカーが仕掛けたものでないとしたら、自殺した子の肉親が犯行に関わっている可能性も出てきた。が、それなら原因の発端であるかもしれない仙道君が狙われなければおかしい。これは違う。
何かあるはずだと思っていたんだが、前の学校での手がかりを得ることはできなかった。
僕が見たきた、読んできた推理とはまるで違う。手がかりはそううまい具合に散りばめられてはいない。
『やっぱり僕には無理なのか…』
たかが一般高校生に凶悪事件の解決なんて、どだい無理ということだ。悲しいかなそう思わずにはいられなかった。