瞳の中の少女…12
季節は移り変わり、秋から冬へ。
雪がちらつき始めた頃には彼女の怒りも鎮まり、平穏な日々を過ごしていた。
薄く這うように積もった雪は、シルクを引いたように汚いものを覆い隠している。白いシルクは微かな太陽の光を反射させ、彼女の網膜にゆっくりと吸収される。
真っ赤な色を発していた瞳は、その白い光で潤われように中和されて元の澄んだ桃色に変化していた。
今の彼女の微笑みは、絶えず身から溢れ零れている。幸せなのだ彼女は、彼を見ているだけで。彼女はこう思う、人が幸せなのは最良なことだ、たとえそれが悪であろうと。
彼女は…間違っている。