瞳の中の少女…14
次の日から僕らは仙道君と共に過ごすことが多くなった。彼ともっと仲良くなると同時に監視ということも考えて。
彼は突然仲良く話し出す僕らに戸惑っていたし、彼のクラスメイトも不思議な顔をしていた。
外見のクールで二枚目な、一見すると取っ付きにくい感じとは裏腹に、笑顔が素敵でさりげなく優しい感じがする。彼に惹かれる女の子達は、そこら辺を感じ取っているのかもしれない。
もてない男としては、羨ましい限りだ。
告白されるかもしれないことを仙道君に伝えることも考えたのだが、ここはあえて言わないことにした。僕らの動揺よりはるかに大きな動揺が胸を突き刺すだろう。それほど、彼は参っているようにも見えた。
隠し事をしてしまうことになるが、不確かな情報で彼を不安にさせたくは無かった。
世間話から学業のことまで三人で話をしていたが、彼と始終一緒にいられるわけがない。
やはりその時が来た。
放課後部活が始まる前に、バスケ部の1年生井上典子さんが、仙道君に手紙を渡してきたのだ。
帰りのホームルームが終わり放送室への道筋、彼は青い顔をして僕のところにやってきた。
「ついさっき、学校の玄関で手紙を貰ったんだ」
女性からの手紙なんて、僕から見たら羨ましいことなのに彼は迷惑そうな顔をしている。
「そう…その時に誰か人がいた?」
予想していた僕は冷静に対応した。
「結構な人が見ていたと思う…もし通り魔の犯人がこのことを知ったらあの子を襲うかもしれない」
仙道君は力強い声だった。もし犯人がここの女生徒ならば、致命的だ。
「…そうだな…とりあえず今日部活が終わったら、彼女を家まで送ろう。僕と桂木も一緒に付いていくから」
「…彼女を守るよ」
「それは…彼女のことはどう思ってるの?」
仙道君は答えなかったが、彼女に好意を持っていることだけは感じられた。
「それにしても危険な賭けだね」
「ああ、でも彼女は襲われないかもしれないんだ…なんせ全部僕たちの推測なんだから」
仙道君は何かを決心したように目を見開き、自信ありげに頷いた。
「そうだね」
彼の自然な笑顔を初めて見たような気がした。この時の彼は、数奇で過酷な運命を背負っているなど、微塵も感じられない。この笑顔をいつも見せてくれるようにしよう、僕はそう誓った。