フリージア

瞳の中の少女…18

自作小説

 事件解決3ヶ月後

 桜の舞う季節、僕は3年生になった。大学受験を控える、大事な年である。
 僕はある病院へ足を運んでいた。歩きながら周りの景色を見て、桜並木がある河川敷を通って春を感じていた。
 家から川、そして山へ、20分ほど歩いて山の中腹にある病院へと着いた。
 ここに来るのはもう3回目だ。
 受付に向かいアポがあることを確認する。
 「どうぞ」
 受付の女性はニコッと笑い、右手を病院の奥へと向けた。

 僕は病院にはめったに来ない。どこの病院でもだ。
 病院というところが、どうも好きにはなれないのだ。誰かの苦痛、冷たい空気、独特な匂い、廊下の薄暗さ、どれもこれもこの世のものでは無い雰囲気に感じてしまう。
 滅多に病院などに来ない僕は、どこからか不意に襲われるのではないか?そんな気配を覚え、目的の応接室へ向かう。
 長い廊下を突き当たり左へ曲がるとエレベータがある。僕は上へ向かうボタンを押した。
 6階から降りてきたエレベーターに乗り、3階へと向かう。そのエレベータは狭かった。僕は何故かしらその狭さに恐怖を感じる、その時初めて自分は閉所恐怖症なのかもしれないと思った。ここへ来てから恐怖ばかりだな…
 僕は目を閉じ早く3階に着くのを待った。
 3階に着き左にまっすぐ10メートルほど歩いたところで突き当たり、左に曲がった。ここには人がいるのかと思うくらい、静寂に満ちている。僕の足音しか聞こえない。
 僕は応接室へ着いた。
 ノックをする。
 「失礼します」
 「どうぞ」
 中から女性の声が聞こえた。ドアを開けると綺麗な顔立ちの女医が笑顔で迎えてくれる。このお医者さんと会うのは2回目だ。
 「ありがとう、また来てくれて、大事なときなのに」
 「いえ、かまいません」
 促されるままソファーに腰を下ろした。