Ben日記

ベンクー

思ったこと、感じたことの日記

タケシの武勇伝…第二部(17)

自作小説

-主な登場人物-
北野健(キタノタケシ・主人公)、浩(ヒロシ・弟)、真紀江(マキエ・母)
櫛部志郎(クシベシロー…同級生・通称シロー)、拓郎(タクロウ・父)、美枝(ヨシエ・母)
高岡賢司(タカオカケンジ…同級生・通称マサミ)
石橋亮(イシバシリョウ…同級生・通称リョウ)
佐々木真也(ササキシンヤ…タケシの後援者・通称シンさん)
塙喜一(ハナワキイチ…佐々木家の執事兼事業管理者・通称ハナワさん)
富山昇(トミヤマノボル…生徒指導主任・体育教師・通称ゴリ山さん)
小野塚智久(オノヅカトモヒサ…体育教師・野球部監督)
谷岡啓二(タニオカケイジ…校長・通称タニケイ)
山口勉(ヤマグチツトム…スーパー山口の店主・通称グッさん)


---第1部、あらすじ---
 野球少年の北野健(タケシ)は、中学3年の冬、利き腕に兆弾を受けて野球ができなくなってしまう。仕方なく進んだ地元高校で夏休みの補習授業を受けるハメになったタケシは、そこで佐々木真也(シンさん)と出会い、彼の勧めでもう一度野球をするための手術を受けることになる。
---第2部、前回まで---
 2学期初日、タケシと仲間たちは野球部に誘われたがその場で返答できなかった。放課後、タケシはシローの父拓郎を説得したその足で教官室へと向かった。ゴリ山さんは小野塚と連れ立って校長室を訪れ、生徒の部活動必修化に向けての賛同を得た。そして、リョウとマサミは誰もいない教室で話し合っていた・・・
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≪マサミの過去≫


 教室中に5時のチャイムが鳴り響く中、リョウはマサミの言葉に耳を傾けていた。


「オレさ、中1までリトルリーグで野球やってたんだ。そんで最後の大会でエラーしてさ……『お前のせいで負けたんだ』ってそん時のエースのヤツに言われたんよ……他の連中は庇ってくれたんだけど、そん時の監督がエースのヤツの親父でさ……そんなんでチームがメチャクチャになっちゃって……だからオレ、野球辞めたんだ……」


 嫌な思い出をしぼり出すように、マサミの言葉はゆっくりでたどたどしかった。だが、教室中に響く蝉の声を押しのけるだけの重みがあり、心痛を感じさせる一語一語がリョウにはしっかりと聞き取れた。

「でも野球やんなくなったら何にも上手く行かなくって、勉強も全然やる気起きなくて、結局この学校しか入れなくてさ……昼にゴリ山さんが『野球やらないか』って言われた時はアタマにきたけど、やっぱこのまんま嫌な気持ちでいるのは悔しくってさ……オレ、一緒に行っていいかな……」

 何も言わずに黙ってマサミの話を聞いていたリョウは、実はマサミが野球をやりたがっていることを聞いて内心ホッとしていた。正直なところ、一人でゴリ山さんの所に行くのは心細かった。
 多少ゴリ山さん本人が怖いこともあったが、それ以上に、カナダに居た頃に見聞きした日本の高校野球の厳しい練習に付いていく自信がなかった。
 リョウも自分なりの覚悟はできているつもりだが、いくらすぐにタケシが入ってくると分かっていても、毎日平均6時間も練習する日本の高校野球の姿は、海外で暮らしていたリョウにとっては常識外れだった。

 そんな時、一緒に行ってくれるというマサミの言葉は、リョウを勇気づけるのに充分な一言だった。

「うん。一緒に行こうよマサミ!」

「リョウ……ありがとう!」

 リョウは、サッと椅子から立ち上がると無意識にマサミの前に右手を差し出した。マサミも差し出された手を握り返しながら立ち上がった。

 その瞬間、蝉の声が一段と増して教室中に鳴り響いた・・・


※※つづく※※

  • ソラちゃん

    ソラちゃん

    2010/11/04 10:34:38

    平均6時間!?@@
    野球部、、、頑張りすぎです・・・。

    マサミ君、過去の苦しい思いをバネにして、
    再度、立ち向かって乗り越えられればいいですね。^^

  • でふぉると

    でふぉると

    2010/11/03 23:21:13

    平均6時間って、甲子園まで勝ち上がってくるチームってそんなに練習してるんだ。
    もう学校に授業を受けに行ってるんだか、練習しに行ってるんだか判らないね。
    まあ、普通の野球部はそんなに練習してないと思うけど。

  • スイーツマン

    スイーツマン

    2010/11/03 17:03:43

    平均6時間の練習。趣味というにはたしかに異常。スポーツやるから頭がよくるという人もいますが、そういう人は稀で、ふつうの人が多いような。

    マサミ君が野球を再開することで、今後の人生に希望を導き出しますことを。

  • オイヒメ

    オイヒメ

    2010/11/03 15:12:31

    いやな思いをすると絶対に忘れないのが人間の性。
    マサミが勇気を絞り出したことも、リョウが勇気付けられたことも、お互いがそれぞれ自分の気持ちを奮い立たせるためのきっかけになってるのでしょう。
    大学野球でも7割の選手が野球を辞めても構わないと思ってやってるのが現状ですので、一人で決断できないことを何も恥じることはないとマサミやリョウたちに教えてあげたい気がしました。(…それだけ厳しい練習や規制を受けている世界。仲間こそ自分を奮い立たせる原動力・・・そう説いてるのだと僕は思いました!)

  • lily

    lily

    2010/11/03 14:49:17

    あんなに練習しているのって、日本の高校球児だけなのですね。
    暑いなか頑張っているのを見ると、凄く応援したくなりますが、
    同時にとても身体が心配になります。

    1人じゃ怖いことも、誰かと一緒なら大丈夫。
    そういうこと、ありますよね。