日記ダイアリー徒然草

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小説/詩

ユリ01「旅」

(10)

固い感触だった。
おきたときに見たのは黒。
黒だった。
あぁ分かったこれは、
誰かにおんぶされてるのだ。
で、            誰?
「わっ」
驚いて身をのけぞらせた。
「わっ」
そいつも驚いたのか前につんのめった。
投げ出された私は地面に衝突した。
「起きていたのか」
黒ずくめだった。
「な、なんなのさ」
「なんなのさ、とは失礼だな。ぶっ倒れたのはお前だぞ」
黒ずくめは顔をしかめた。
あぁそうだったのか。私は思い出した。
どうやら、さっき見えていた、桜の林を歩いているようだ。
「乗れ」
奴が言った。
「いや大丈夫だって。歩けるから」
そういって立ち上がったものの、思いっきりぶっ倒れた。
「乗れ」
「私、重いから」
「知ってる」
「……おい」
自分より、背が低い奴に乗るのは気が引けるが、言ったら今度こそは殺されそうなので黙ってのった。
しばらく無言で歩いていた。
なんだか歩くのがやけに遅い気がする。
「ねぇ大丈夫?やっぱ重いんじゃない?私もう歩けそうな気が…」
「悪かった」
奴は私の言葉を遮って言った。
「え?あぁさっきの事?私のせいだもん。ほら、」
取り繕うと、必死で言葉を並べた。
「違うその事じゃない。ホームで……」
あぁ、あの事か。あの時打ったところが、またジーンと痛んだ。
「べ、べつに誤るほどのことじゃないじゃん!!それにアレは私が悪かったんだし!!」
「悪かった」
低い声であいつは言った。
「ごめんな」
ちらりとこちらを見た。
「……うん、分かった」
それからまた無言で歩き続けた。