創作小説「雷獣」(8)
第8話
会議2日目。
「北院の長が現れるらしいぞ」
「昨日に邪法士とやりあったそうだ」
「まだ若いが、実力は確かなようだな」
「クルト殿と兄弟だとか」
そんな中、クルトが広間に現れ、彼の冷ややかな視線でざわめきが消える。
その後に入って来た青年に誰もが息を呑む。
上質な衣服を身に纏い、威厳すら持ち合わせて現れた彼の姿はクルトに酷似していた。
しかし雰囲気が全く違うため、兄弟という先入観がなければ見逃してしまいそうになる。
皆の視線を受け止めて不敵に笑った彼の側には灰髪の青年。
珍しいその髪の色は、先代の法術師と同じ色。
東院の席から小さなざわめき。
「沙羅だ、先代法術師の孫の……」
かつて東院にいた頃の顔見知りを見つけて、沙羅は東院では見せたことのなかった微笑を返す。
堂々と北院の席に座る二人に会場内の視線が釘付けだった。
「さて、皆が揃った所で、会議を始めようか」
最後に入って来た現法術師・クウマの言葉で恒例会議は始まった。
ベッドの上で目覚めた戯加は大きな紅い瞳と目が合って驚いた。 同じ年頃の女の子。
周囲を見渡してみるが、彼女以外、部屋には誰もいなかった。
「クルトとエンユは会議中よ」
彼女の言葉で、今いる場所は西院で、ベッドで眠っていた理由を思い出した
「僕…邪法士に……」
操られている間も鮮明に意識はあった。
エンユの肩に噛み付いた感覚がまだ歯に残っている。思わず口を押さえ、這い上ってくる悪寒をやり過ごす。
「エンユ様の怪我……」
「クルトがすぐに治したから平気よ」
ホッとしたのもつかの間、今度は不安が胸を占める。
魔獣。
エンユに拾われる以前の記憶は幼かったこともあって殆どなかった。邪法士に会って引きずり出された過去の記憶は、真実として刻み込まれていた。
ヒトではない自分。
驚きと共に納得している部分がある。
「僕…エンユ様の側にいてもいいのかな……」
小さく呟いた言葉。
また、操られたり、力の制御が効かなくなって人を、大切な人達を傷つけたりすることに恐れを感じる。
「あんたバカ?」
呆れた声で言われ戯加はシエロを見る。
「今、エンユが最善を尽くして会議に挑んでるというのに、当のあんたがそんなんでどうするの?!」
「最善?」
「そうよ、私が一晩かけて沙羅ってヒト連れて来て、頭ばっかりの権力に固執しているオヤジたちを黙らせようとしてんのよ」
「一晩って…北院まで?!」
馬車で片道2日の道程を…普通なら不可能だ。
そう、普通なら。
軽々と炎虎の炎を受け止め強火を放った彼女が、普通のヒトであるはずがない。
改めて見た彼女の紅い瞳に、覚えがあった。
少女の姿ではなく、もっと大きな生物で…数年前の事件の時、クルト、エンユと共に邪法士たちの元へ向かった―火竜。
「迷惑だと思うなら怪我してまでもあんたを助けようとしないし、必死になったりもしないわよ、エンユは。それくらい、ずっとエンユの側にいたなら判るでしょ」
確信ある自信に満ちた言葉。
「エンユはあんたが普通のヒトでないことは気づいていたと思うわ。邪法士達から私を助けてくれた時に言ってたもの」
「え?」
「“俺の側にも似たようなヤツがいるぞ”って。判って側に置いてるんだから、あんたは気にせず安心して居ればいいのよ」
「側にいるのは迷惑にならないかな」
「なると思うのなら、これから強くなればいいのよ。エンユに頼ってもらえる程に」
語る彼女の瞳を見て気付く。彼女自身がそうやって強くなったんだと。
「うん」
力強く、戯加は頷いた。
第8話をお届けでーすww
次回が最終回になりますww
てことで、イラストのUPし終わりました――
ぜひぜひ華麗なイラストを見学してみてくださいww
皆様ご希望のノーラ姉さまもおりますわよw
一番気合いを入れて描いてくれました ぷぷww
登場人物7人分ありますので、よろしくですーー♪
http://74472678.at.webry.info/album/aki-kakera
しゅーひ
2010/11/26 22:33:12
あんたバカ?
の台詞でアスカをちょっと思い出しちゃった、赤つながりでw
おっと、イラスト見に行かないとw
あき☆元綵
2010/11/26 21:54:58
あははは 雫さんありがとうございます><
はい、直しましたですwww
雫⋆
2010/11/26 21:37:26
あきさん、7話が2つありますよっ(゚-゚;)
シエロさん、性格ちょっときついですね。
でもそこが素敵(