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ラト

なに描こか?なに伝えよか?

北の少年 激闘編 9

自作小説

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;


「始まっようだ…馬鹿め、これで居場所がはっきりわかる」
ロウ・バルトは不敵な笑みを浮かべ、熱心に巨大な銀の鏡を覗き込んでいた。
青白く発光する鏡面に映っているのは、赤毛の少年ロヴの姿だ。
片手で短剣の鞘を握り締め、目を閉じて真剣な顔で意識を集中させていた。
彼の周りに緩やかな風が渦を巻き、髪の毛や服の裾をなびかせている。
「力を使えばその軌跡をたどれる。お前の居場所をはっきりさせる事ができる」
そうつぶやき、ロウ・バルトは指を鏡面につきつけた。
「その為に間抜けな盗賊団をけしかけた。屑のごとき人間達のために力を使うとは、愚か者めが!」
ロヴの顔を優しく指でなぞり、そのまま首の位置までたどってゆく。
「我のこの手で、お前の首を紅い血で飾ってやろう。真紅の首飾りは、ざぞや似合うだろう」
さらに指を走らせ、ロヴの短剣に掌を添わせた。
少年が手にする短剣の鞘に己の手をやり、ぐっと握りしめた。
「そして、この短剣を我が物とする。私に相応しい姿に戻してな」
ゆらめく鏡の光に照らされたロウ・バルトの表情は、狂気を帯びた者のそれだった。
視線はロヴの短剣に注がれたままで、酷薄な笑みを浮かべている。
その表情を見る者かいたら、その場に立ち竦んでいただろう。
もとが端正な顔だけに、その酷薄さは目を覆うばかりだった。
だが、あくまでも彼は独りだ。
誰もいない部屋で、銀の鏡の前でただ独り。
彼の瞳に映るのは、赤毛の少年と彼の短剣だけのようだった。
「待っていろ、ロウ・ヴェイン。今からそちらへ行くから」
細い指を鏡面のロヴにつきつけ、そう高らかに告げる。
それに応じる声はなく、ただ何も映さなくなった鏡があるばかりだ。
ロウ・バルトは酷薄な笑みを浮かべたまま、目を閉じて精神の集中をはじめる。
脳裏に鮮明な赤毛の少年を思い浮かべる。
自分の周りに集う、風の精霊を思い浮かべる。
「風よ。我をロウ・ヴェインのもとへ運べ」
その声とともに、一陣の強い風が室内に吹き荒れた。
ロウ・バルトのまとう黒衣が風になびいて、まるで魔物の羽のように彼の周りで舞い踊る。
その風とともに、ロウ・バルトの姿はかき消えた。

ケニスキャラバンの宿営地に戻るジェンの目には、無数の風の精霊が飛び交う様が視えていた。
ロヴがいる場所を中心にして、幾筋もの風の道ができている。
砂丘の上にいる弓隊。
盗賊団の中心を駆け抜けて、キャラバンとの間に盾となって戦う傭兵達。
弓で迎えうとうとしている隊商の者たち。
その道は彼女にも届いていて、風の精霊が周りをゆったりと舞っている。
これだけの力が使えるのは、二人の魔法使いが完全な信頼関係の上で協力しているからだ。
「やるな、あの魔法使いは。ロヴの力を自分の力として使いこなしている」
ケニスの雇った魔法使いは、さして強力な術者ではない。
だが、経験と知識は豊富な熟練者だ。
こういった実戦で役にたつ魔法使いは、熟練した技の持ち主だ。
そのいい例が今回の活躍にも良く現れていた。
魔法は便利だが、万能の力ではない。
どんな優れた力も技も、熟練した知恵と経験とそれを活かせる知識がないと宝の持ち腐れだ。
幾度も戦場にたったジェンには、それがよく理解できた。
ロヴのように強力な力をもっている見習いの魔法使いは、強力な術者よりも、熟練の技と経験をもつ術者に力の制御を学ぶ方がより早くその術を学べる。
「ロヴはいい師匠にめぐり逢えたようだ」
そう呟いた時だった。
いきなり強い圧力を眉間に感じて、ジェンは空を見上げた。
ロブがいる宿営地の中央、そのはるか上空に何かが出現しようとしていた。
禍々しい何か、悪意を持った何かの気配。
ジェンはこの気配を誰よりも知っている。
暗く冷たく、底なしの闇を思わせるこの気配。
「ロウ・バルト…お前か!」
ジェンは全速力で、ロヴがいる宿営地に駆け出した。



大変、おまたせいたしました^^;

  • ラト

    ラト

    2010/12/24 20:08:28

    だあくさま
    馬鹿な敵ならやりやすいんですけどね~^^;
    さて、次の話しは今年中に書き上げるつもりです。
    もう少しお待ちを♪

  • だあく

    だあく

    2010/12/24 14:50:33

    ロヴ・バルト  敵も賢いですね~~
    見つかって どうなるのか!!
    でも 孤独なバルト 一人で どこまでやれるかしら・・・

  • ラト

    ラト

    2010/12/22 20:47:15

    momokaさま
    ジェンもロヴも、それからカイルも次の話から忙しいぞw
    空から降って来るのがあれですから…。
    書くほうも大変です^^;

  • momoka

    momoka

    2010/12/21 20:37:52

    ロヴもだんだん力をつけてきたので

    すごい魔法使いになりそうですね♪

    いい師匠にもめぐりあえて^^

    でもジェンが上空に見たものは.....

    がんばれジェン(^O^)/