日記ダイアリー徒然草

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小説/詩

ユリ01「旅」

(13)

「早くっ、にんじんの皮むいてっ」
突然の大きな声に、私は目覚めた。
寝起きと熱のせいで、頭がボーっとして、すべてが夢だったかのように思えた。
けれど、辺りを見回すと、そこはあの小さなテントだった。
記憶が戻ってくる。
「タダっサボるなっつーの!黒ちゃんはあんなに働きもんなのにさっ!!」
私は起き上がると、外を覗いた。
綺麗な桜の絨毯の上に、二人の人間が居た。
一人は昨日の女の子だった。改めてみてみると、16歳ぐらいのようだ。
ちょうど、テントに背を向ける形で立っているので、表情は見えない。ただ、声の調子から怒っていることだけはわかる。
もう一人は、男の子だった。
折り畳み式のいすに座って、何か本のようなものを読んでいる。
かなり分厚くて、まるで辞書のようだ。
見た目は同じ16歳くらいだが、幼くも見えるし、もっと上でもおかしくはない。
淵の茶色いめがねを掛けていて、少し茶色が混ざった長めの茶髪を、真ん中で分けている。
目の色は灰色だが、東洋系の顔立ちをしていた。