YUKIEのきまぐれ日和

YUKIE

 気まぐれに、その日の出来事や、感じたこととかを書いていくつもりです。
 あと、別のブログで公開していた小説もUPしています。よかったら読んでください。

ホットミルク

自作小説

「いてっらっしゃい、あなた。」
「ああ。」

「あなた、お茶いかが。」
「ああ。」

「ねぇ、ちょっと聞いてよあなた。」
「ん~?」
「今日お隣の奥さんがね・・・。」
「ああ。」

 夫の態度はいつもそっけない。昔から口数が少なくて一見無愛想な人なのはわかっている。
 でも最近、夫は自分をうっとおしく思っているんじゃないかってときどき、心配になる。
 結婚して2年。そろそろ私たちも倦怠期なのかしら。


 今日は休日だけど、いつものように起きた。けど、なんだかだるくて寒いような気がした。
「どうした?」
「あ、ううん。なんでもないの。」
 夫には迷惑かけまいと平気なふりをしてご飯を作ろうとした。けど、体は思ったように動かない。

「お前、俺が気がついていないとでも思ったか?」
「え?」
「飯はいいから、さっさと寝てろ。」
 
 夫はぶっきらぼうにそう言って、私を無理やり寝室に押し込んだ。
 台所の方から、何かを洗っている水の音、軽快な包丁の音、ガスコンロに火をつける音が聞こえてくる。
 自分で何でもこなしてしまう夫。ときどき、自分がちょっと情けないと思ってしまう。
 わずかな隙間から、鍋で何かを暖めている夫の背中が見える。

「入るぞ。」
「あ、はい。」

 夫の持ってきたお盆の上には、はマグカップに入った暖かいミルク。
「蜂蜜を入れたホットミルクだ。風邪のときにいいって同僚から聞いてたから。」
「あら、ありがとう。」
「ちゃんと飲めよ。」

 ミルクを飲んだら温かくなった。体も心も。

「あなた、ありがとう。」
「べ、別に・・・。」
 いつもと変わらない素っ気無い返事。でも、夫はどこか照れくさそうだった。

 
 夫は、私が風邪を引くと、いつも温かいミルクを入れてくれた。結婚して20年間、変わらなかった。


 ある日、風邪を引いて寝込んだ。
 でも・・・、部屋の隙間から見えた背中はもう見えない。見えるのは寂しさ漂う誰もいない台所。
 夫は1年前、突然帰らぬ人となってしまった。
 あのときの温かさはもう戻ってこない。あの夫の姿はもう消えてしまった。

「お袋。大丈夫か?」
「ん?大丈夫よ。」
「無理すんなよ。ちょっと待ってろよ。」

 そう言うと、息子は台所で何か作業をし始めた。お鍋と牛乳を持っているのが見えた。
 あ、あの姿・・・。

「お袋。牛乳温めたよ。ちゃんと蜂蜜も入っているぜ。」
「あら、ありがとう。」
「お袋や俺が風邪引いた時、親父、いつもこれ入れてくれたもんな。」

 そうか・・・。夫の姿も温かさも、消えてなんかいない。今もちゃんとここにあるんだ。
 ホットミルクに、一粒の涙が落ちた。


  • YUKIE

    YUKIE

    2009/03/31 15:44:51

    みかりんごさん:感想ありがとうございます(^^)お話を書いたら読ませていただきますね。

  • みかりんご

    みかりんご

    2009/03/31 14:38:34

    あったかいお話ですね♪
    わたしもあったかいお話を書こうかなとおもいますw
    ありがとうございましたw

  • YUKIE

    YUKIE

    2009/03/29 21:09:05

    jyunさん:感想ありがとうございます(^^)これもyahooブログで紹介していた話の一つです。また来て下さいね(^^)/

  • jyun

    jyun

    2009/03/29 20:59:51

    いいですね〜。
    ほろっときました(; ~ ;)
    素敵なお話、ありがとうございます(*^ ^*)

    ホットミルクが飲みたくなりました♪
    (実は暖かい牛乳はちょっと苦手なのですが(^^; )