日記ダイアリー徒然草

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小説/詩

ユリ01「旅」

(16)

「あっそういえば、自己紹介してなかったね」
「え、あ、はい」
突然振られた。
「私、桜って言うんだ。15歳。よろしくねっ」
ずいぶん遅い自己紹介だが、心がなんだかホカってした。
「……あの。ユリでいいです」
小さく言った。桜はにっこり笑って、
「私はなんて読んでもいいからね」
と言った。
「それから、こいつ!!」
折りたたみいすにずかずかと近寄り、男の子の襟首を、ぐいっと掴んで持ち上げた。
「ほらっ自己紹介!!」
「ちょ、しおりっ~~」
しおりを拾い本に差し込む彼。
彼は、こっちを見るとめがねを直すと言った。
「ごめん、自己紹介がまだだったけ」
喋っているとなんだか、ボーっとした感じの人だな、と思った。
(別に訛りも無いし、ハーフなのだろうか?)
放っておくと、あっちへふらふら、こっちへふらふらってなってしまいそうだ。
けれど倒れそうではない。しっかりとした芯がある。