「さくら亭」日報

あずみ

毎日のお着替えやマイルームの改装等、主にニコッと内のできごとを綴ります。

『芙蓉千里』『芙蓉千里II北の舞姫』感想

小説/詩

土曜日1日かけて読んで、それからずっと引きずっているので
やはり感想を吐き出さないではいられない。

著者は須賀しのぶ。
集英社のコバルト文庫で『キル・ゾーン』『流血女神伝』『アンゲルゼ』等を長年書いていた人で。
ミリオタで歴史オタなのがよくわかる人物w
いやあ、昔の方がコバルトは懐が広かったね。
物語の骨格が非常にしっかりしていて、ドラマチックな展開でぐいぐい読ませる作家で、容赦なく主人公は悲惨な目に合うのだけれど……。

さて『芙蓉千里』はケータイ小説サイト「Sari-Sari」に掲載されていたものをまとめたもので、角川書店からソフトカバーで出版された。
『芙蓉千里』392P、『北の舞姫』398P。
上下余白あけすぎだから、もっと詰めて薄くして欲しかった。
実に読みにくいぶ厚さ……。
一旦物語の中に入ってしまったらどうでもよくなるけれど。

時は明治40年。12歳の少女フミは自ら女郎になると決めてハルピンに渡る。
列強の意図ときな臭さの充満したロシア文化と中国文化の混ざる街。

当然、当初の舞台はフミが住み着いた娼館「酔芙蓉」であるし、
そこに生きる女たちの姿は決して幸福なものではない。
だがこのヒロインの前を向いて生きる強さは苦界すらも凌ぐ。


『キル・ゾーン』のヒロインは傭兵だったし、『流血女神伝』のヒロインは子供だった(成長していくが)からと思っていたが。
ああ、やはりと言うべきか。
『芙蓉千里』のヒロイン、フミ。
やっぱり色気ねえーーーーーーーーっ!
この舞台で、その職でここまで色気ないのはいっそ立派だ!
ちゃんと恋愛もあるし、朝チュンに近いとはいえ男女の関係もあるのにw

それはともかく。
この時代を背景に書ききったことに拍手を送りたい。
まだかつての満州を知っている人は存命しているが
語ってくれる人は少ないし資料もありそうで案外ない。
そこに波乱万丈な人生を送るヒロインを放り込んでくれたことに感謝。

書き足りないがひとまずここまで。


<付記>
竹宮恵子の『紅にほふ』も満州での芸妓たちの暮らしと強さを描いていてお勧め。