ま、お茶でもどうぞ

蒼雪

日々感じたことを書いています。
なんとなく、徒然草。

モンスターハンター 勇気の証明~三章-23

自作小説

【雷狼竜の根城・2】

ユッカが初めて訪れてから、早三ヵ月。渓流の秋も進み、紅葉の天蓋からのぞく空は、深い藍色を見せ始めていた。
「もうじき日が暮れる。ここのジンオウガは夕方から活動するみたいだから、そろそろ私達も行動しないとな」
食事を終えたミーラルが、片手剣アイシクルスパイクを腰に装備して言った。
北の山中に出没するベリオロスというモンスターの素材で作られた剣は、斬りつけると相手を凍らせる威力を持つ。
「だいぶ強くなってんだろうなあ。この三ヵ月、ずっと誰にも倒されないでいたんだからよ」
グロムも、ミーラルと同じ素材で作った大剣アイシクルファングを、よっこらしょと背負う。
「…うん。そうだね」
唇を噛みしめ、ユッカは小さくうなずいた。背負った弓アイシクルクレストが、いつになく重く感じる。
「…同情は禁物だニャ。ユッカは何も考えずに、狩りに専念するニャ。それが相手に対する礼儀ってもんだニャ」
ランマルがユッカの腰の辺りに、ポンと手を当てた。励ましているつもりなのだろう。
ユッカは心持ち笑顔を見せた。
「大丈夫。いけるよ」
「…それじゃ、敵の位置を割り出そう。グロム、地図を」
「あいよ」
グロムがポーチから渓流一帯の地図を取り出し、みなの前で広げた。
ミーラルが千里眼の薬をひと息に飲み干す。
この薬は、人体の第六感まで感覚を引き出す。飲むと、一時的だが、およそ十キロメートルほどの範囲内にいる大型の敵の位置がわかる。
「…どうだ?」
グロムが、目を閉じて集中しているミーラルにそっと話しかける。
「…ここだ」
ぱっと目を開け、ミーラルは忘れる前に、感じた敵の位置を指で示した。
地図に記されたエリアの番号は7。昼間は水鳥が遊ぶ、芦の生える美しい水辺である。

「急ぐニャ。敵が移動したら、ややこしくなるニャ」
「うん、行こう!」
ランマルが促し、ユッカも力強くうなずく。三人と一匹は気持ちを一つにした。目的地へ向かって走り出しながら、ユッカは思う。
(絶対に、負けられない!)

この闘いは、ユッカ達のランク3昇級試験だ。けれど、それ以上に大切なものを背負っている。ジンオウガに被害を受けている、村の人達の苦しみ。ハンター生命を奪われた、ミランダの切なさ。それから、ランマルの心の、見えない傷。

あれからだいぶ回復して、歩けるようにまでなったミランダに、ユッカの父が酒場を紹介した。
もとは食堂を営んでいたこともあり、ミランダの料理の腕は一流だ。
珍しい南方の料理は、村人はもちろん、旅人や訪れるハンター達に評判になり、酒場は以前よりも盛況を見せている。ミランダも、新しい生活に慣れてきたようだ。
けれど、第二の生き甲斐だったハンター業が続けられなくなったことは、彼女にとって大きいだろう。
決して顔には出さないし、会うたびに笑顔だ。けれど、それは、ユッカ達を傷つけまいとしているのがわかる。
それでも、自分の運命を受け入れて生きるミランダは、ユッカには誰よりも輝いて見えた。
そして自分は今、ミランダの意志を継いでハンターの道を歩いている。
狩りをすることは、命を奪うことだ。
けれどそれは、お互いに生きていくための摂理のようなものだと、ユッカは思っている。人間は、食われるだけの生きものではない。痛みも悲しみも持っている。
大切なものを守りたい気持ちは、きっとこの世で一番強い生きものじゃないだろうか。
この三ヵ月間、そればかりを考えてきた。
命懸けで闘って生き残って、ただひたすら、思うこと。
生きててよかった、と。
「…臭うニャ」
その昔、未曾有の嵐によって一夜で滅んだという廃村の空き地で、ランマルがぴたりと足を止めた。
「奴はすぐそこだニャ。気合い入れていくニャ!」
意気を確認すると、みな緊張した面持ちで水辺へと向かった。
大人の背丈ほどもある長い葉が、そこかしこから天に向かって伸びている。 中天には満月が昇り、青白い光に満たされた夜は明るい。
雷光虫が無数に飛び交う様は、何度見てもこの世のものとは思えない光景だった。
水を飲みに来たのか、ゆったりと歩を進める雷狼竜もまた、猛々しく美しい。
全身を覆う鱗の隙間から漏れる青白い光は、まるで古代の入れ墨を思わせる。
碧玉の体躯に白いたてがみが揺れ、ぱちぱちと火花が踊っていた。
「…帯電してるニャ。どっかで狩りでもしてきたのかニャ」


#日記広場:自作小説

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/12/15 15:30:05

    小鳥遊さん、コメント感謝です。

    そうですね、ミランダにとっては、これが一番ベストだと思いました。
    ユクモ村は気候もいいし、よそから来た人でも暮らしやすそうなので。
    旅に出させることも考えていたんですけどね、こっちがいいかなあと(笑)

    第二の人生って、つらいものですよね。思いが強ければ強いほど、諦めることは身を切られるようにつらい。あのミランダが、ショックで寝込んでしまうほどに。
    それでも、受け入れたミランダは強い女性ですね。自分なら…かなりひきずってしまうと思います。
    彼女は人間として理想像かもしれません。

    ユッカがこんなに命について考えるのは、俺自身の感想でもあります。
    今でこそ、アイテム「生肉」を手に入れるために、必要な時に害のない草食獣を倒しちゃいますが、
    ゲーム始めたてのころは、親子連れには絶対に手を出しませんでした。(今もだけど)
    ガーグァが狩れない、と悩んでいたユッカは、半分は俺です^^;
    でも、普通はそういうものじゃないですかね?犬が家にいるんですが、動物も感情があるんだと思うと、無下にしようと思いませんよね。たとえ野良や野生でもね。

    景色の描写、ゲームをやったことのない小鳥遊さんにも伝わって良かった。ありがとうございます^^

  • 小鳥遊

    小鳥遊

    2011/12/15 14:30:38

    ああ、ミランダはユクモ村にいるんですね。
    良かったぁ~という安堵感が大きいです。
    ここまで読む前には、成長したユッカとの再会を望んでいたましたが、
    ユクモ村にいてくれる方が何倍も嬉しいです。
    考えてみたら、ミランダには帰る場所も行くあてもないですものね……。
    これまでに失くしてきたものも大きいですが、これから得られるものもあると信じてほしい、と思いました。
    それにしても、ユッカは成長してますね~~。
    狩りをすること、命について……こんなにしっかり考えているなんて。
    大切なものを背負って闘う者には、芯の強さがあると思いますし、その強さが闘いでも活きてくると
    そんな予感を抱きつつ、続きを読ませていただきます^^

    それから、読んでいると目の前に景色が広がるよな描写。
    さすが蒼雪さんだなぁ~~と思いました^^

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/08/13 14:19:57

    アイマールさん、コメント感謝です。

    あはは、見事に当てられちゃいましたね^^
    前もって決めていたんで、当てられてもそこは良いです。むしろ当ててもらわないとw

    モンハンのボウガンは、形だけで、実質は銃なんですよ。でも、遠距離から狙い撃ちってカッコいいですよね。知的な感じがします^^
    アーチェリーにご興味があるの、なんだかわかります。近接戦も戦略が必要ですが、さらに高度な冷静さと知識が要求される当たり…知将って感じがしませんか?^^

    温泉街の商店…ほんとにそうですねww
    温泉卵って、なぜか現地ではおいしく感じますよね。温泉で煮たと思えば、ありがたみも増して感じるからかな?(^m^)
    ふつうのゆで卵なんですけどねえ。

  • アイマール

    アイマール

    2011/08/13 08:56:16

    そういえば、ユッカは弓とボウガンに武器が変わりましたね~。
    …まさかホントに当たるとは。www
    何かそんな勘がしたんですよ。 (^m^*)
    でもボウガンって結構かっこよくないです?
    実は私、アーチェリーに興味あるんですよ。
    これ、ビリヤードとかダーツとかと一緒で、ハマる人はハマりそう。
    お金に余裕があればやるんだけどなぁ…。残念!

    果物(食料品)とゆで卵で生計を立ててるって、それホントに温泉街の商店ですやん。www
    旅行に行くと、温泉卵見付けるとつい買っちゃうんですよね~。
    普段あんまり食べないのに。
    お祭りの屋台の食べ物マジックと一緒ですよね。www

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/08/11 23:53:53

    イカズチさん、レス感謝です。

    『ギルドショップで売ってる物と大差無いのに・・・』
    思いますね~。だから、ここを本文で読んだ時は、盛大に笑いましたw
    まったく同じものが売られているんですよね。
    あ、でも、村の雑貨屋は、さらに商品が豊富ですよ! 店先を見て下さい、果物とか温泉卵も取り扱っていますよ!
    だから、村の雑貨屋は、ハンターも買い物できるけど、主に村人・旅人用のお店なんですよ。
    果物(食料品)とゆで卵で生計を立ててるんですね、うん。

  • イカズチ

    イカズチ

    2011/08/11 23:42:42

    『書かれていない所を自由に想像する』と言うのは楽しいですよね。
    忠実と言っても『ユクモ村にまんじゅう屋がある』とは何処にも書いていないし、無いとも書いていない。
    ならある事にしてしまえ、と言うのがグロムの実家です。
    雑貨屋だって娘が居るとは思えないお姉さんが店番しているし……。

    雑貨屋に関して私の話でグロムも言ってますが『ギルドショップで売ってる物と大差無いのに、商売が成り立つんだろうか』不思議だと思いません?

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/08/11 09:52:26

    イカズチさん、コメント感謝です。

    ありがとうございます^^
    結構ゲームに忠実に書いてらっしゃるので、ダメ出し飛んでくるかと覚悟していましたw
    でも、何でもゲーム通りだと、読んでいてつまらないですしね。
    基本忠実に、でもそこから自由な発想を付け加える。それが、読み手にも書き手も楽しめる、ノベライズの醍醐味ですね^^

  • イカズチ

    イカズチ

    2011/08/11 02:57:48

    現実感を伴う世界設定ならば、なおの事、杓子定規な設定など無いのでしょう。
    ランクアップの試験も『ジンオウガ』だけでなく『ナルガクルガ』『ベリオロス』に変わる事もあって良いと思います。
    逆にリアル感が増しますね。
    さて、いよいよリベンジ。

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/08/09 23:59:24

    そらさん、コメント感謝です。

    続きは明日~w
    …中間地点の描写ですみません^^;
    2000字ってきついなあ…。

  • そらのかけら

    そらのかけら

    2011/08/09 23:57:56

    ふむふむふむ
    続き、つづき!!w

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/08/09 23:32:10

    wordからコピペしてきたんですが、行間がおかしいので調整したら、なんかずれてしまいました。
    上と下が…。

    少々お見苦しいですが、ひとまず投稿します。あとでもう少しいじってみます。
    たぶん、wordの原稿は行初めに一スペース空けて書いたのが原因かと。
    ややこしいなあ^^;

    それと、ゲームでのギルドランク3昇級のクエストは、ジンオウガを孤島で倒すものですが、今作では村長クエストと同じ、渓流を舞台にしました。
    そこまでゲームに厳密じゃなくてもよいかと思って。オリジナルの自由さもまた、こういうジャンルでは醍醐味かと思います。