Ben日記

ベンクー

思ったこと、感じたことの日記

読書感想「新田義貞」

小説/詩

新田次郎著「新田義貞」を読みました。
ご存知の方も多いでしょうが、新田義貞とは、北条氏による鎌倉幕府の権力が衰退し、後醍醐天皇が建武の親政を起こす時に天皇側について鎌倉を陥落させた武将です。
その後、天皇の命により京都に上った義貞は親政の手伝いをさせられるのですが、如何せん天皇の親政自体が時代を逆行させるものであり、結果的に政治改悪となり、各地で親政に対する不満が高まったため、足利氏の台頭を生じ、後に足利幕府と南北朝という皇室を2分する状況を生み出しました。

新田義貞は、楠正成らとともに最後まで後醍醐天皇側につき、言わば「馬鹿な憂き目」に遭わされた不幸な人物であり、最後には足利側の敵将に待ち伏せされて灯明寺畷(とうみょうじなわて)という所で落命します。

この作品を読んでいくうちに感じたことは、新田義貞という人物の一途さや潔さに感動するといった主人公に対する熱い思いではなく、如何にある特定の人間が政権を握ることが市民の弊害になるのかを強く感じさせられたことでした。

太平記を元にしたこの作品は、「一所懸命」(自らの所領を守るために戦うこと)を旨として新田義貞らの武士たちが命懸けで天下を覆したにも関わらず、ただ天皇の側近と言うだけで実際には戦いもしなかった者たちばかりが恩賞に与かるという不平等な悪政が「建武の親政」であったことを教えられました。

その後の歴史で分かるように、結局、後醍醐天皇とその側近貴族たちと袂を分かった足利尊氏がその後室町幕府を拓き、「錦の御旗」を持っているということで殺されなかった後醍醐天皇派が吉野に南朝と呼ばれる天皇家を二分する時代を生じさせ、結果的にその後応仁の乱などの社会混乱を生むきっかけとなったのです。

武士の潔さに対する貴族の浅ましさ・・・戦うことのみで権力を手にした者たちが如何に後世に悪癖を残すのか・・・とてもやるせない思いになりました。

武力は一時(いっとき)・・・協調こそがより永い平和を生む・・・この思いを強く抱かされる作品だと感じました。

  • スイーツマン

    スイーツマン

    2011/08/31 04:09:56

    少数ながら戦った公家と親王もいたのですがいい目にあってませんね
    五代将軍夫人となる日野富子のご先祖なんかは組してますね

    昔、城館の堀を発掘していたら板碑という墓石が堀からでてきて、
    鎌倉攻めに参加した年の冬を示す年号だったので
    関係者ではないかということになったのを覚えています