伝えたい言葉12 前編

自作小説

 「アヤ。仕事はもう慣れた?」
 「うん、まぁまぁって感じかな。」
 「姉貴、ちゃんとご飯食べてる?」
 「食べてるよ。あんたたちこそ、コンビニ弁当とかで済ませてないわよね?」
 毎日の日課の報告会である。携帯電話の家族割で、電話料金は無料なので電話代を気にしないで話せるのは澤井一家人とっては本当にありがたい事だ。
 夜10時。その時間が澤井家の日課報告時間だ。今日も今日とて805号室での食事を終え、綾奈は自室で電話をしているのだ。
 「ねぇ、諒一。大学進学考えてくれた?」
 「…またその話かよ。」
 電話越しに聞こえる声がいかにも嫌そうだ。
 「当り前よ。あんたの一生を左右する話なのよ!!」
 綾奈の目下の最大の関心ごとは諒一の進学だ。諒一の担任に言われるまでもなく、綾奈は諒一にも叶斗にも大学に進学してほしいと思っている。それに、その学力は十分あるのだから。それはもう担任から「大学に進学させるように」と呼び出しを食らうほどに。
 「そんなに心配なわけ?自分の将来よりも?」
 不服そうな諒一の言葉に綾奈は大きなため息をついた。
 「あのね、なんで私の将来の話になるの?今は諒一の大学進学の話でしょ。」
 「それは、アヤがなりたいって思ってた仕事を諦めて、秘書の仕事に就いたからさ。それって俺たちの為にってことだろ?」
 「―――そっ、それは。」
 「だから前にも言ったけど、俺はアヤが幼児教育免許の資格を諦めたのに俺に大学に行けっていうのが気に食わないんだ。俺たちの犠牲になり続けてるアヤの姿を見ているのがつらいんだ。」
 吐き捨てるように語気を強める
 「別に諒一や叶斗の犠牲になっているなんて思ってないわ。それに今の仕事、すごく気に入っているの。―――会長は、大変だけどおもしろい方だし。それに普通なら絶対なれない仕事でしょ?だから私は今の仕事に就けて幸せだと思っているわ。」
 「そんなの詭弁じゃないか!!アヤが幼稚園の先生になりたかったのは俺たちが一番よく知ってるんだ。それなにの、その夢を諦めて就職しなきゃ駄目だったんだろ?」
 「諒一。それは過去の話だし、今はこの仕事で満足してるわ。こんな仕事に就けて本当に感謝してるんだから。」
 「だから、俺も高校出て働くって言ってるんだよ。―――それに、そんなに大学に行った方がいいなら叶斗が行けばいい。叶斗だって医者になりたいって言ってるんだし。俺よりも出来がいいんだ。」
 「諒一!!」
 「とりあえず、この件について俺はアヤの言う事なんて聞く気はないから。」
 そう言い切ると、電話を叶斗に代わる。綾奈と大きなため息をついた。
 「姉貴、今は兄貴に何を言っても無駄だよ。―――それよりも、本当にしんどい仕事をしてるんじゃないよね?」
 「何よ、叶斗ってばいきなり。…特にしんどい仕事とかはしてないわ。周りの人に助けてもらってばかりだけどね。」
 そういう綾奈の頭には、つい先ほどまで食事を一緒にしていた雅也の顔が浮かんだ。
 (今日のナス味噌炒め、美味しくできたなぁ。)
 少しずつ増えていく雅也の部屋の調理道具。それが、綾奈に「ここに居てもいいんだよ」と言ってくれているようで面映ゆい。
 


#日記広場:自作小説

  • 凛

    2011/10/29 19:18:42

    コメントありがとうございます。
    そして、訂正箇所も教えてくださり感謝です。

    勢いで書いちゃうんでこんなことが多々ですね…。


    澤井家の兄弟愛は不滅な感じです。
    両親をなくす前から多分大切に思ってきたんだろうけど、
    やはり、三人だけになってしまったのが大きな一因かも…。

    綾奈の中で雅也の存在が徐々に大きくなってきてるところです。
    いずれ対決することになるんだろうでしょうけど
    その時は父親対彼氏みたいな構図になりそうな予感です^^

  • 沙月☆しゃむ

    沙月☆しゃむ

    2011/10/28 19:09:51

    細かいところなのですが、諒一の台詞「とりあえず~ないから。」の部分、
    「聞く気」が「きくく」になっています;;

    相変わらずお姉さんが心配な弟さんたち・・・でも、微笑ましいですね、きっとそれだけ好かれているのですね。
    でも、お姉さんが自分の心配(大学進学)をしだすと、やはり嫌になってしまう・・・
    いくら大人っぽくてもやはり弟なのですね。姉弟らしくなく、それでいて姉弟らしすぎるこの3人の関係が大好きです←

    弟さんたちも、お姉さんが自分たちを想っていることを知っているのですね。
    それで、「犠牲になり続けているアヤの姿の姿を見ているのがつらいんだ」のところ、感動しました。
    何度見ても、この姉弟のお互いを想う気持ちに心が温まります。

    最後の雅也さんに対する気持ちのはっきり表れている文。
    弟に大切にされ、雅也の優しさも感じていて、きっと綾奈さんは幸せなのでしょうね^^
    夫婦のような温かさに、やはりあったかい気分になります。

    続きも楽しみにしています!

  • 凛

    2011/09/18 23:50:56

    ひゆきさん

    ありがとうございますw
    主婦ですよ、主婦w

    諒一は、どうしても「澤井家の長男」って気持ちが強い子なので
    こんな感じになっちゃいます。

    進学、どうするんでしょうね??
    って、自分で考えろって感じですねღ

    いつも感想いただけれ嬉しいです。
    これからもよろしくお願いします。

    ひゆきさんの新作、楽しみにしてますね。

  • ひゆき

    ひゆき

    2011/09/18 23:28:58

    きゃはっ!(>∇<)
    もう完全に主婦してるじゃないですかw
    雅也さん家のww

    えー
    久々、弟くんたちの登場ですね!
    こんな安らぎの時間?があったのかw
    諒一くんはホント、かたくなですよねー。
    一生懸命親代わりをしなくちゃ!って思ってる綾奈さんと
    逆にお姉さんを守ってやらないと!って思ってる弟くん。
    進学云々の問題はまだまだ続きそう・・・。

    また続きを楽しみにしています☆

  • 凛

    2011/09/13 21:47:07

    月黒さん

    いつもありがとうございます^^
    いろんな方から意見を頂けるとすごく
    頑張れます。
    これからもどうぞよろしくおねがいします。

  • 月黒

    月黒

    2011/09/13 21:31:05

    あわわ。私の出番ないや;´Д`)

  • 凛

    2011/09/13 19:17:14

    しぐねさま

    ご指摘ありがとうございます。
    どうしても私が書くと「だ」が多くなっちゃうんです。
    しぐねさんのおっしゃるとおりに直してみると、テンポ良くなりました。
    本当にありがとうございます。

  • しぐね

    しぐね

    2011/09/13 19:10:36

    綾奈の目下の最大の関心ごとは諒一の進学だ。諒一の担任に言われるまでもなく、綾奈は諒一にも叶斗にも大学に進学してほしいのだ。それに、その学力は十分あるのだ。それはもう担任から「大学に進学させるように」と呼び出しを食らうほどだ。

    全部、"だ。"で終わり、読んでいてテンポが悪いと感じたので、

    綾奈の目下の最大の関心ごとは諒一の進学だ。諒一の担任に言われるまでもなく、綾奈は諒一にも叶斗にも大学に進学してほしいと思っている。それに、その学力は十分あるのだ。それはもう担任から「大学に進学させるように」と呼び出しを食らうほどに。

    こんな感じとかどうかな…なんて、といきなり指摘コメ、失礼しました(´-ω-`)