ま、お茶でもどうぞ

蒼雪

日々感じたことを書いています。
なんとなく、徒然草。

モンスターハンター 勇気の証明~五章 09

自作小説

【腐れ縁・承前】

「そんなにどもるな」
 思わず腰を抜かしてしまったグロムに、ミーラルは番傘を差しかけた。
「濡れるぞ、そんなとこに立ってると。……って、もう濡れてるな」
「ミーラル、なんでここに……」
「ここ、私んちなんだけど?」
 酒場での剣幕が嘘のように、ミーラルはひそやかに微笑した。グロムはあぜんとして、水たまりに尻もちをついたまま幼なじみの顔を見上げていた。
「武器屋の親父さんに、道具を届けてきた帰り。そしたら、あんたがいたからびっくりしちゃった」
「……そ、そうか」
「うん」
 しばらく、雨の降りしきる音が続いた。薄闇の中、グロムはミーラルから目が離せないでいた。
 心臓が、嫌な緊張にばくばくしている。言わなければ、という脅迫にも似た思いが、ついに口を開かせた。
「み、ミーラル。あのさ……」
「グロム、私……」
 二人がしゃべったのは、ほぼ同時だった。
「ごめん」
「ごめんね。……え?」
 ミーラルがきょとんとして口に手を当てる。なんだか、少し見ぬ間にずいぶん女っぽい仕草をするようになった……気がする。
 グロムは、ようよう立ち上がって頭を掻いた。
「いや、まあ、あのさ……。よくよく考えたら、巻き込んだの俺じゃん? ハンター一緒にやろうってさ。なのに、勝手に俺からコンビ解消してやる、だなんて……身勝手すぎるよな」
「……たりめーだ、バカ」
 ふんと鼻で笑って、ミーラルは冷ややかな言葉を浴びせる。 よかった、いつものミーラルだ。安心しかけたグロムの笑い顔が、固まった。
 こちらを見つめるミーラルは、何かをこらえるように唇を噛んでいた。
 やばい。グロムの胸が、とくんと高鳴る。あの時のように。
「……きっちり、責任取ってくれなきゃ困るんだよ」
 ふいに、ミーラルは表情をひるがえした。きつく眦(まなじり)を上げ、胸を反らしてこちらを見下すようにしゃべる。
「ふつーの女の子でいたかったのに、いきなりとんでもない道に巻き込んで。ハンターなんてヤクザな稼業、何度もうやめようって思ったことか。モンスターは怖いし、怪我は痛いし、お風呂には何日も入れないし……」
「お前……」
「……でも」
 困ったように眉根を寄せて、くしゃりとミーラルは笑った。
「やめられないんだよなあ……。私、ハンターが好きになっちゃったみたいだ」
「ミーラル……」
 やばい、と、グロムの頭のどこかで警鐘が鳴った。
 こいつ、かわいい……かも。
「やるからには頂点極めたいじゃないか。けど、それには私一人じゃ無理なの。わかるでしょ?」
「あ、ああ……」
 どきどきと、グロムの心臓が鳴っている。ミーラル相手に、こんなに緊張したのは生まれて初めてだった。
「……あんたと、ユッカちゃんとショウコと。四人でまた、狩りに行きたいな~、なんて……ずっと考えてたんだ」
「お、俺も……」
 発した声が上ずっていた。かっこわりい、とグロムは舌打ちしたい思いだったが、構わず言葉を続ける。
「俺も、今まで通りがいい。お前と、みんなとで、いっぱい狩りしてさ。いろんな所行ってさ。そんで大もうけ! わはは」
「結局それかよ」
 ぷっとミーラルが吹き出す。グロムはにかっと笑った。
「おう。『狩りに生きる』の、教官のコラム見てさ~。俺もロックラックみたいな都会に豪邸建ててえ~! って決意したわけよ。男の浪漫だよな」
「そういえば、どうして教官は豪邸を建てたのに、今はユクモくんだりにいるんだろ?」
「そういや、そうだな……?」
 事情を知らない二人が顔を見合わせた時、どこからともなく調子っぱずれの歌声が聞こえてきた。
「ジョーさん、ジョーさん、お~かおが怖いのね、そ~よ、ベリさんも、こ~わいのよ~」
「こ、この声は」
「もしや……」
「きょ、教官! 声が大きいです。夜なんだから、もっと静かに……」
「ぬははは! うぃ~、良い気分だ! 貴様も歌え! そ~れ、ジョー君はね~ゴーヤって言うんだ、ほんとはね~だけどでっかいから、みんながイビルってよ~ぶんだよ、おかしいね、アルバ~」
「どーしてそこでアルバトリオンになるんですか?」
「……すっかり悪酔いしてるニャ」
 困り果てた声も聞き覚えがある。見れば、前方から二人と1匹の影がこちらにふらふらと近づいてきた。
 


#日記広場:自作小説

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/09/27 09:26:31

    GRさん、コメント感謝です。

    おお、お褒め頂きありがとうございます!
    恋愛小説は苦手といいつつ、なんか書いてしまう俺ですが、こういう恋愛フラグシーンは毎度頭を悩ませます。
    この場合、ミーラルの気持ちは?グロムの心境は?と、お互いの立場になって考えるので、双方向からの想像に時間がかかりまして…。特に、グロムの心境を考えるのが大変でした。今まで彼視点のストーリーがなかったので。
    それで、コハルを出して時間を稼ぎつつ、グロムがどう動くかテストしてました。
    なんとか、うまくまとまってよかったですw

    教官登場はですね、凍土のシーンだけだとカッコよすぎて、物語的に中途半端になってしまうから。それと、ここはぶち壊さねば!という、俺のイジワル心からですwww
    良いシーンになると、誰か邪魔しないかな~と思う人間でして…ww

    多彩な顔を持つ教官、キャラのブレ具合がギリギリですが、彼の奥深さでなんとかそれは回避されています。ゲームの中でわずかに出てくる彼の言動と、アニメ「アイルー村」の教官を合わせて考えているんですが。ゲームの教官の方が、もう少しカッコいい…と思いますw

    歌、お気に召して頂いて感謝です^^
    最初の歌で、「ベリさん」とべリオロスを歌っていますが、あれはGRさんがベリオロスをベリさんと呼んでいたところからもらっています。初めは「ティガさん」だったんですが、個人的にべリオロスが怖い顔だと思いまして。良い呼び名はないかと考えていたら、ちょうど…w助かりましたw

  • GR_Toyo

    GR_Toyo

    2011/09/27 02:07:21

    ミーラルの口調と表情、そこから引き出されていくグロムの心の動き・・・
    すごくキレイな1シーンでした
    読みながら脳裏に浮かんでくる情景に思わず見とれるような・・・

    そして、教官登場の絶妙なタイミング^^;
    フレーム単位でガッチリ合った見事なタイミングで雰囲気を一撃粉砕・・・さすがです、教官!
    酒場で、ベースキャンプで、狩りで、そして今回、それぞれ全く違う顔を見せてくれますね
    動きも表情もすごい豊かな目が離せないキャラです
    ・・・そしてなにより、今回の歌が私的にかなりツボでしたww

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/09/24 09:56:12

    イカズチさん、コメント感謝です。

    あははwww
    フラグ感じたらいけなかったですか?でも、一本くらいフラグ立てとかないと、次の段階に進めませんからね。
    前のコメントにも書きましたが、キャラ立ての章なので、このくらいやっとかないと最後が盛り上がらないと思うんです。
    ほんと、今から最終章が楽しみでしょうがないので、その前夜祭みたいなこの章で、読む人にグロム達を好きになってもらえればいいなと。

    教官の歌は、最初は「ぞうさん」で、次が「さっちゃん」の歌の替え唄です。
    なんか歌わせたいと思って思いついた歌詞ですが、気に入っていますww

    ジョーの怖い所は、顔だけじゃなくて、俺はよだれが一番嫌ですね^^;
    よだれに当たり判定あるって反則っぽいじゃないですか。防御下げられて拘束=食い殺される、なんてひどすぎるwww
    べリオロスも般若みたいな顔で、アップになると怖いですね。
    でも、ジョーがとりわけ恐れられるのは、素材の説明が怖いからだと思います。頭の皮を剥ぐとすさまじい悪臭がする、とか…もう醜悪さが前面に出てる^^;

  • イカズチ

    イカズチ

    2011/09/24 03:02:54

    『警鐘』!
    これはヤバイ。
    こう言う『警鐘』と言うか『予感』みたいな物、ホントにありますしね。
    俗に言う『恋愛フラグ』
    思わず「まて! グロム、それを感じちゃイカン」と唸ってしまいました。
    ここら辺の秀逸な心理描写は蒼雪さんの十八番ですね~。
    引き込まれます。

    教官……お邪魔虫。
    替え歌の『ジョー君が怖い顔』ってのは実体験でしょう。
    わかります。
    ありゃあ、他のモンスターと恐怖度合いが別物ですから。