キラキラ集め報告所

サーティーン

ニコッとタウンにあるキラキラを何処で手に入れたかの(ほぼ毎日)報告。あと、ニコッと関連の話をいくつか。

フェイトブレイカー!序章3

自作小説

「…それから先は覚えてません。ただ、逃げるのに必死で…」
「そしてここに辿り着いた訳じゃな」
フェムトの言葉にリトルスノーは頷いた。
そして、目を伏せ俯いたまま、彼女は言葉を続ける。
「私がもう人間じゃない事はわかってます。
 そしてもう元には戻れない事も。
 でも…でもどうか、もうすぐ生まれる子供だけは…」
(珍しいのぅ。怪物が涙を流すとは-)
率直な自分の考えに些か苦笑いしつつも、フェムトは石人形の拘束を解いた。
「無事生まれるかどうかは保障できんが…もし出産できたら、私が育てよう」
「!?あ…ありがとうございます!」
リトルスノーは顔を上げて感謝した。
危うく目を開けるところではあったが。
「…もう一つお願いがあります」
「…わかっておる。些か心苦しいがな」
フェムトは苦渋に満ちた表情をした。
いくら怪物となったとはいえ、
人の形をして、人の意思を持っている者を殺めるのは誰だって良い気分はしない。
「気にする事はありません。今の私は生きた屍ですから…」
思わず俯いてしまったフェムトに、リトルスノーは目を伏せたまま答えた。
そして自分の腹をいとおしげに撫でて、
「…あの人の忘れ形見。この子だけが今の私の支えなんです」
と付け加えた。
「今でも愛しておるんじゃな。…亡き夫の事を」
フェムトの言葉に、リトルスノーは深々と頷いた。
それを見て
(…羨ましい話じゃのう。もっともだからといって盗むのは許さん話じゃな)
彼女を怪物に変えた“満月の王”とやらに静かに怒りを燃やしていた。


その夜から数週間後。

かつての故郷であった都市・イルミナから信頼できる産婆を一人雇ったフェムトは、
今、出産に立ち会っている最中であった。

「全く…アタシャ色んな出産に立ち会ったけど、こんなのは初めてじゃ」
フェムトと同じくらいの齢の産婆は、ブツクサ言いつつも、
手際よくリトルスノーの出産に尽力している。
(やはり産婆を雇って正解じゃな)
産婆にあれこれ指示されて辟易するも、自分の判断に安堵していた。
(…死産で終わればある意味楽なんじゃが)
ふと不謹慎な考えが頭をよぎり、それを振りはらおうと頭を振ったその時だった。


オギャアァ!オギャア!フギャア!


「…ふぅ、よかったのぉ。元気な男の子が産まれたわい」
産まれたばかりの赤子を湯につけて産婆は表情を和らげた。
「…産まれた…ので…か?」
「おうおう。元気な男の子じゃぞ。ほぅらほぅら」
「そう…まぁ…な…てげ…きで」
リトルスノーはうっすら目を開けつつ赤子を撫でるが、
その言葉は急に力を失いつつある。
「お、おい!おい!しっかりするんじゃ!愛した夫の子供なんじゃぞ!」
約束を忘れるほど取り乱したフェムトは思わず大声で彼女に呼びかける。
だが、彼女が発する言葉の力は急激に弱まっていく。
「…アロースノウ」
恐らくそれが彼女が考えた子供の名なのだろう。
そして最期に一言だけ言い残し、
「…私の…体は…燃やして…くだ…さ……」
負の生の存在である亡者-吸血鬼-であるリトルスノーは、
最後の最後で人間となれて安らかに息を引き取った。


数刻後。
フェムトは、リトルスノーの火葬を行った。
彼は亡骸が燃えていく様から目を向けず、
自分の腕に抱かれた赤子をじっと見つめていた。
(…約束は守らねば、な)
リトルスノーとの約束に対し、改めて決意した。


-それから7年後


フェムトはリトルスノーが名付けた赤子に対し、
“アロウ”という通り名を付けて、自分の弟子として育てていた。
育児とは縁のなかった彼だが、彼が幼い頃通っていた学院時代の事を思い出し、
それを手本としていたので、さほど問題は起こらなかった。


しかし。
満月の夜にそれは起こってしまった。


本来なら既に寝ているはずの弟子の部屋から激しい物音がして、
フェムトは慌ててその部屋に駆け込んだ。
「!?」
「血…ち…ッ…ウガァァァ!!」
師匠の教えに従い、大人しかった弟子が、彼の姿を見て勢いよく飛び掛ってきた。
背に翼を生やし、両手の爪を鋭く伸ばして。
「…石よ、人型となれ!」
間一髪でそれを避けたフェムトは咄嗟に呪文を唱え、石人形数体を作り上げた。
「そいつを取り押さえろ!」
これで何とかなるはずだったが、アロウの暴走は止まらない。
何と子供の体格なのに石人形の一体が腕一振りで切り裂かれた!
幸い体の一部が欠けただけだが、フェムトは長くはもたない事を瞬時に判断した。
すぐさま別の部屋に戻り、ある物を手にし部屋に戻ったところ、
予想通り、石人形は全て粉々になっていた。
アロウはまたフェムトに飛び掛るが、
「莫迦者!頭を冷やさんか!」
と聖水の入ったビンをフェムトはアロウに投げつけた。
ビンが裂かれ、聖水がアロウの身体に降りかかる。
するとようやく、彼の身体は人間のそれに戻った。
「…これが“吸血鬼の血”のなせる業か」
先程とはうって変わったかのように寝息を立てるアロウを見て、
フェムトは落胆した。

  • みんみ

    みんみ

    2011/09/26 19:09:11

    o(*^▽^*)o~♪あはっ
    一気に読んじゃたぁ^^

    こんなに続けて書いて大丈夫?

    でも おもしろいよo(*⌒―⌒*)oにこっ♪