天使の棲む街

くりす

日々の事やら趣味の事、たまに気まぐれに短編詩とか徒然に…。

ヴァンパイア【後編】

自作小説

生まれつき日光に当たる事ができない体質。

それ故に家の中から出る事ができず、

日光を避けて活動するのは自ずと夜になってしまう。

雪のように白い肌と特徴的な赤い目。

近辺に住む人達の目線からしてみれば奇異にうつった事だろう。

古来からのヴァンパイア伝説等は

そんなアルビノと呼ばれる人達がモデルになってできた話なのかも知れない。

しかし、何故彼女は自分に自ら眼帯を外して見せてくれたのだろう?

「なぁに、簡単な事さ。単なる気紛れ…と、君のは甘い匂いがしたからさ」

そう言って、私の頚動脈のあたりを彼女の細く冷たい指先がなぞる。

「つまり要約すると君が気に入ったということだ。深い意味はない、安心したまえ」

形の良い唇の端を上げて微笑む。

「今夜はもう遅い、泊まって行くといい。久々の来客だ、上等な赤ワインをご馳走しよう」

眼帯を戻し、蝋燭を手にとってワインセラーへと彼女は向かう。

「ボクの昔話の中にはもしかしたら君の探し物の手がかりもあるかもしれないよ」

そうだな、こんな夜には他人の思い出話に付き合うのもいいかもしれない。

そう、こんなのないには…誰かと一緒に過ごしたいものだから