ま、お茶でもどうぞ

蒼雪

日々感じたことを書いています。
なんとなく、徒然草。

モンスターハンター 勇気の証明~五章 22

自作小説

【ジエン・モーラン】

「で、でけえ……!」
 右舷から前方30メートル先をゆうゆうと泳ぐ巨体に、グロムは最も月並みで、最もふさわしい感嘆をもらした。
「ジエンの全長は平均100メートル弱だが、こいつはその倍――200メートルもある。さすがヌシといったところだな」
「に、200――?!」
 今自分たちが乗っている船の5倍はあろう大きさを耳にして、さすがのグロム達の顔に緊張と動揺が走った。しかし教官は、ますます不敵な面構えで砂漠の主を見すえた。
「ふふふ、相手が強ければ強いほど、我が狩り魂も燃えるというものよ! 総員配置に着け! 先制攻撃だ!」
「――はいっ!」
 真っ先に返事をしたのはユッカだった。身に着けているのは、レウス一式と、氷属性のライトボウガン“ブリザードヘイル”だ。
 攻撃的な見た目に裏切らず、相手の弱点に鋭く攻めるスキルが発動する装備だ。普段はサポートに徹するユッカだが、この戦いへの決意のほどがうかがえる。
 ユッカは右舷側のバリスタに走り寄ると、素早く座って狙いを定めた。
 集中してスコープをジエンの牙に向ける。的(まと)は魚のようにゆっくりと身体をくねらせて泳ぎ、しかも上下に揺れるため、狙いにくい。
 しかし、この五日間、ロックラック本部でバリスタの扱いを学んでいたユッカは、絶対に外さない自信があった。
(大丈夫――いける!)
 ジエンの動きががやや沈んだ瞬間、左側の牙めがけてバリスタの引き金を引く。大きな弩から放たれた三本の長大な矢が、ゆるい放物線を描いて見事に牙に命中した。
「よっしゃ!」
 グロムが握り拳を固めてガッツポーズをする。
「まだだ、油断するな! 奴がこちらに気づいた。向かってくるぞ! 投石に備えろ!」
 教官が言うのと、ジエンが背を丸めるのと同時だった。背びれにある噴出孔から、一抱えもある大きな岩が三つ、こちらに飛んでくる。
 バリスタに座っていたユッカと、待機していたグロム、ミーラルは、弾かれたように左舷側に逃れた。
「どうわ!」
「どうやって狙ってるのさ?!」
 轟音とともに甲板を直撃した大岩に、グロムとミーラルが悲鳴をあげた。粘りのある特殊な木材で作られた甲板は、岩をボールのように弾き返して砂に落とす。
「すごい、穴があいたりしないのね」
 傷一つついていない甲板を見て、ユッカが目を丸くする。舵を取っているランマルが、軽くかぶりを振った。
「油断はするなニャ。ジエンの体当たりを受け止められるようにも出来ているけど、そう何度も耐えられないニャ。的確に弱点をついて早く倒さないと、こっちが砂の海の藻屑ニャ」
「目標が接近してきたぞ! 砲撃用意!」
 完全にこちらを敵とみなしたジエンが、巨体を傾けて右舷側に近づいてきた。教官の号令で、グロムとミーラルが船尾に積まれている大砲の弾を取りに走った。
「撃(て)-っ!」
 ジエンの身体が目と鼻の先まで近づいたところで、教官が勢いよく手を振り下ろす。グロムとミーラルは、腕が外れそうなほど重い砲弾を次々と込め、発射した。
 どおん、どおんと重い音がジエンの側面で炸裂し、黒煙とオレンジ色の炎が湧いた。だが、さほどの痛痒もないらしく、ジエンの泳ぐ速度は一向に変わらない。
「げえ、効いてねえのか!」
 顔をしかめ悪態をつくグロムに、教官が檄を飛ばす。
「当たり前だ、このくらいでは死なん! バリスタそのまま、――大銅鑼の用意!」
 ユッカがひたすらジエンの弱点のひとつである腕を狙い撃つ。ちょっと、とミーラルが慌てた。
「大銅鑼ってお前の係だろ! なに大砲の弾抱えてんだよ!」
「あれっ、そうだっけ?!」
 両手で丸い砲弾を抱えたグロムが、情けない声をあげた。来るぞ、と教官が怒鳴った。
 ジエンが大きく身体を傾(かし)がせて、一度こちらから離れるようなそぶりを見せる。
「ユッカはん! 危ない!」
 何が彼女を駆り立てるのか、ユッカは砲台にしがみつくようにしてバリスタを撃っている。コハルが身を揉むようにして悲鳴を上げた。
「あああ、もう!」
 誤爆を恐れて大砲の弾を放せないグロムに舌打ちをして、ミーラルが手にしたハンマーを振るう。
 マストの下にある丸い大きな鉄の板が大銅鑼のスイッチだ。ジエンの巨体がぶつかる寸前、ミーラルの振り下ろした鉄槌が火花を散らした。
 船尾に備え付けられた直径4メートルほどの大きな青銅色の銅鑼が、激しく打ち震えた。四方へ重く広がる轟音に、ジエンが驚いて身体を跳ね上げる。
「喰らいやがれ!」
 グロムがすかさず砲撃をジエンの腹に撃ちこむと、ジエンが咆えた。これはさすがに効いたようだ。
「ユッカはん、しっかりするニャ~!」
 ジエンの巨体が揺らいだところで、ふらりとユッカが砲台から落ちた。慌ててコハルが彼女を抱き起こす。ユッカは震えながら泣いていた。
「こ、怖かったよ~! お兄ちゃんのバカ~!」
 


#日記広場:自作小説

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/10/26 10:33:05

    イカズチさん、コメント感謝です。

    そうですね、1人で初見でもドタバタするのに、4人だとなおさらって感じですね^^;
    ちょっとのズレが命取りになるってことを…あ、これは次回で説明しようとしてたんでした。
    つまり、そういうことですね。
    あまりのアクシデントに、さしものユッカも泣きべそをかきました。そんくらい、怖かったってことです。
    実際、ジエンに当たると痛いですしね…^^;

    まぷこさんのご指摘、ためになりますね。
    やっぱり、設備などの説明はあったほうがいいですね。専門用語には必ず何行か割くのは鉄則ですね。
    俺も今後も気を付けます。

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/10/26 10:28:24

    まぷこさん、コメント感謝です。

    はい、「てーっ!」であってます。
    「う」を省略して言う言い方です。軍隊物で時々見られます。
    ブログだとルビが付けられないので、( )内で読み方を付けておりますが、こういう時ややこしいのが難点ですね^^;

    そうそう、バリスタは仰る通りです。大昔の、攻城用弩のことです。
    俺も最初見た時は、コーヒーのバリスタを連想してしまいましたね。
    バリスタ検索すると、電子部品でも同じ名前があるし。
    バリスタが弩だってことを説明しようとしたんですが、話の流れを妨げるので省略しちゃいました。
    一応、モンハンを知っている人が読んでるってのが前提で書いてるので…。
    作中で「大きな弩から放たれた三本の長大な矢が」って、さりげに説明入れてます。これでわかってくれるかなあ、と^^;

  • イカズチ

    イカズチ

    2011/10/26 02:01:59

    対巨竜クエはこれが楽しいんですよね。
    この『混乱』、『ドタバタ』が。
    特に『ジェンモーラン』狩りは各々の役割があり、イレギュラー要素に柔軟に対応する必要に迫られます。
    ドジもまた良し。

    まぷこさんの仰るようにモンハンに特化した固有名詞は注意ですね。
    モンハンをやっている人にとっての常識は、やっていない人に認識できない事がありますから。
    私も書きかけの次章を再チェックします。

  • まぷこ

    まぷこ

    2011/10/25 14:13:50

    発射の掛け声は

    「てーっ!」

    で合ってますか?

    バリスタはカフェでコーヒーを入れる人の事(barista)ではなくて、大型の弩の事(ballista)ですね。(←日本人の苦手な『l』と『r』の違いだ☆)
    ウィキさんによれば、電子部品にもバリスタ、と呼ばれるもの(variable resistorの略)があるとか。
    それぞれ他の物の事を知らない人たちが会話したら、とんちんかんな話になりそうですね。