ま、お茶でもどうぞ

蒼雪

日々感じたことを書いています。
なんとなく、徒然草。

モンスターハンター 勇気の証明~五章 24

自作小説

【赤い夜明け】

 黎明は、砂のせいで赤くなるだろう。
 甲板で望遠鏡をのぞいていたランマルは、険しい表情でネコ髭をぴくぴくさせた。
 東に陣取った砂塵の壁は、徐々にこちらへ近づいているようだ。船の進路は西。ロックラックの方向である。ジエンを止めるためとはいえ、砂嵐にも追われるような状況は、良い気分とはいえない。
 夜明け前の砂漠は、よりいっそうの冷え込みを見せていたが、凍土や火山帯でも裸足で歩けるアイルーには、どうということもない。
 ランマルの小さな胸を冷やすのは、船室で休息をとっている若きハンター達のことだ。
(時間がないニャ……)
 昨日の戦闘では、ほとんどジエンにダメージを与えることができなかった。今日、それなりに大きな打撃を喰らわせないと、討伐することはおろか、足止めさえも不可能になってしまう。
 ギルドから与えられた日数内に目的を達成できず、焦りで無茶な戦いを挑み、結果破れてしまったハンターは数多い。
 ランマルの最初の主人も、それで命を落とした。
 ジエン狩りには、本来なら、主軸となる撃龍船のほかに、拘束を担当する支援船がつくのが普通だ。
 一隻の撃龍船につき、およそ十艘の小船がつく。手漕ぎボートに帆をかけただけの、粗末な支援船に、命知らずのハンターがサポートとして乗り込むのである。
 しかし、船の大きさや設備の不足は見た目にも明らかで、支援船に乗る者が、すべて無事に帰ってきたケースは少ない。
 ギルドはハンターの命を最優先として、それなりの処置と待遇を施すものの、時々無茶な依頼をしてくる。――今回のように。
 相当の実力があると判断されたハンターにのみ、特例として支援船の有無を選ぶことができる。……という選択も、ある意味不条理を覚えるランマルだ。
 先発隊のアリス達は支援船こみで出撃し、結果、撃龍船以外の船はほとんど失われたものの、サポートも含め全員目的を達成して生還してきた。
 船に乗せる人員の選抜は、ギルドが行っている。人柄、実績。すべてがお眼鏡にかなった奴らだったというわけだ。
 それでも、万事、万全とは言い難い。ランマルは望遠鏡をおろし、左舷側のかなたを見つめた。昼夜問わず活発に行動するデルクスの群れが、遠くに跳ね泳いでいるのが見える。その砂中に、かのヌシは潜んでいるのだろう。
(シン様……。カッツェ……)
 ランマルはおのれの手のひらを見つめ、ぎゅっとかたく握りしめる。耳の奥で、かつての主人が叫ぶ声が聞こえた。
 ――ランマル! お前は逃げろーっ!
 ランマルの主人、シンは、大剣とヘビィボウガンの使い手だった。迅速かつ、接近戦で挑まなければならないジエン戦では、大剣を背負って赴いていた。
 船員やハンター仲間が何人も手助けをして行う狩りの手順を、すべて一人でこなすことができれば、ジエンを一人で狩ることも可能である。シンは、その数少ないハンターだった。
 ――昔、船の上で仲間を失くしちまってな。だから、もう、誰も乗せたくないんだ。
 シンがなぜ、いつも一人でジエンを狩りに行くのかと尋ねたランマルに、かつての主人は、寂しそうに笑った。
 ランマルは、主が大好きだった。彼の行く所にはどこにでもオトモをした。時々足手まといになったりしたけれど、主人は笑って責めなかった。ますます好きになった。
 だから、今度のジエン狩りに赴く際に、無理を言ったのはランマルなのだ。自分も一緒に行って手助けがしたいと言って。ランマルは、ジエンを見るのも狩るのも、それが初めてだった。
 根負けしたのか、シンはそれを許した。ランマルと同期のメラルー、カッツェも同行させた。カッツェもまた、シンをとても慕っていた。孤軍奮闘を心配していた、シンの妻ミランダは、心強いと喜んでいた。安心していたのかもしれない。
 しかし、いくら経験を積んでいても、毎回同じようにいかないのが狩りというものだ。
 シンにあてがわれたジエンは、シンの実力でも倒せるかどうかという相手で、たまたま風向きが悪くて砲撃が外れたり、甲板に乗りあげたデルクスに足を取られて攻撃のチャンスを逃すなんてよくあることで――。
 細かな不運が重なり、シンが目標としていたジエンは、ほとんど手傷を負うことなくロックラックまで接近する結果となった。
 ギルドは市民を地下の避難施設に退避させることはしても、ジエンを狩る要員は出さなかった。――すでにいなかったからである。
 街へ接近するジエンが、群れの中でも最大級であったことが、ある意味災いした。狩ることで得られる膨大な富のために、ギルドもハンター達も目がくらんだのだ。少なくともランマルはそう思っている。
 シンは、欲目は持たずに行ったのだろう。ただ、己の大切なものを守りたかっただけなのかもしれない。
 でも少なからず、安心と慢心はあったと思う。船を出したのは、シンだけではなかったからだ。
 
 
 
 
 


#日記広場:自作小説

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/10/28 09:59:35

    イカズチさん、コメント感謝です。

    上級者でも、クリアまでに何度も練習したり落ちているって、GRさんを始め、各達人が述べていました。
    TA動画ですごいプレイを見せていても、それが毎回ってわけじゃないそうです。
    実践で失敗しないための、実力の底上げが大切なんですね。
    イカズチさん仰る通り、不調だったりしてミスは避けられないですからね。人間だからなあ…。
    上級の腕前と装備をしていても、落ちる時は落ちます。いつでも緊張感を保てるゲームって他に類を見ないですよね。良作のゆえんですね。

    ねこの肉球ってやわらかいんですか?
    犬の肉球はちょっと固い気がするんですが。ねこのは触ったことがないので…^^;
    いつか触ってみたいです。ぷにぷに…w

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/10/28 09:52:56

    まぷこさん、コメント感謝です。

    はい、ピンクです。しろねこですから…♡

  • イカズチ

    イカズチ

    2011/10/28 04:09:11

    前回の狩りでGRさんが落ちた時、全員が驚きましたよね。
    あの時、『ああ、狩りは生き物なんだなぁ』と感じました。
    どんなに強者のハンターでも、ちょっとした油断、体調の不良、イレギュラーな障害のせいで窮地に追い込まれます。
    熟練になっても対応が出来る率が上がるだけで決して零にはならない。
    それだけこのモンスターハンターと言うゲームが良く出来ていると言う事なのでしょうが……。

    ピンクの肉球……。
    ウチの子にも一匹います。
    か~い~んですよ、これが。
    ぷにぷにぷにぷに……。

  • まぷこ

    まぷこ

    2011/10/27 14:38:20

    ランマルの手のひら……

    きっと肉球はピンクだ。

  • 蒼雪

    蒼雪

    2011/10/27 13:23:40

    2話連続アップです。
    シリアス注意。