恭介

ついてない?

その他

映画は旧いラヴロマンスだった…。

リバイバルらしいが、内容は知らなかった。

友人、家族を巻き込んでのゴタゴタの末

主人公とヒロインは、結局結ばれないままエンディング。

デートの映画の結末が悲恋とは…。




映画館を出ると夕立が降っていた。

身だしなみにばかり意識が行っていたせいか

天気予報まで気が回らなかった。

勿論、傘などない…。



幸い彼女のほうは傘を持ってきていた。

暮れかけた街を雨に滲むヘッドライトの群れを

避けるようにしてひとつの傘で歩きだした。

車道の脇で、雨に叩かれ落ち葉たちの泣く道を

ふたりとも黙ったままで…。



気が付くと、いつの間にかすっかり暮れ落ちて

川沿いの桜並木の歩道に人影は無い

時折彼女の横顔を照らして消えるヘッドライトに

彼女の涙を見たような気がして

思わず足を停めた。

微かに僕を仰ぎ見た彼女の

その赤い唇に雨だれが一滴落ちて流れた。

見つめ合う瞳の中に僕の姿が映って消えた。

音もなく歩道に傘が転がって

ヘッドライトがひとつの影を映して消えた。