恭介

君への忘れ物 【2】

映画

「Rahal to Sarah  oath of under sword」

指輪の文字は確かにそう読めた。

死者からのクリスマスプレゼント? まさか!?

にわかには信じられない出来事に一瞬事務所内は静まり返った。

そんな空気を察してか

「ともかく。いたずらにしても犯人は探し出さないとね」

そういうとサラは、指輪を箱へしまい立ち上がった。 

「そういえば、宅配便はどこから送られてきたの?」 

「だから、差出人欄は空白で…探りようがない」

「はぁ?しっかりしてよ店舗コードで担当者までわかってるんでしょ?」

「ああ」

言われてみればその通りだ。



「どうやらサブドゥアみたいだな。そこからの発送に間違いない」

「ふうん、辻褄は合ってる訳か~ますます手の込んだ真似してくれるじゃない」

そこにノーマが口を挟んだ。

「包装紙にあったジュエリーアンジェも、案外サブドゥアかも知れないね」

そうであれば、手っ取り早く解決してくれるのだが。

「高速鉄道を使えば、2時間ってとこね、お誘いに乗ってみましょうか」

サラはサブドゥアに向かう気でいるようだった。



「行ってらっしゃい」

ノーマと俺は気持ちよくサラを送り出す…はずだった。

だが……。

「ちょっとお姉ちゃんとデートしましょうか? サブドゥアまで」

無論逆らうことなどできるはずもなく、ずるずると駅へと引きずられていった。

駅に着きキップを2枚買った、だが肝心のサラは…。どこいった?

寒空の下ベンチに腰掛けると愚痴のひとつも言いたくなってきた。

「しかしだ…。差出人不明の指輪が来たからってなんなんだ? 

しかも差出人は死んでる奴かもしれない? 黙って貰っておけば良いだけの話じゃないのか?」

構内吹き抜ける風はとても冷たかった。

「世間はクリスマスだってのに、俺は一体何してんだ?」

寒さの為かどうも思考がネガティブになりがちだ。 いかんな。

「ごめんごめん、ちょっと知り合いに会っちゃって」

悪びれる様子もなく現れると、キップを受け取りさっさと改札を抜けていった。

「なにしてるの? 置いていくよ?」

ずんずん歩を進めていき、小さくなってゆくサラの背中をみつめながら

(まったく勝手な奴だよな…)

後ろに付いて行きながら、そんなことを考えていた。



「案外悪くないわね、辺境行きの特急というのも」

列車が走り出すと、サラはようやく口を開いた。

「そろそろいいだろ? 心当たりがあるのか?」

「そうねぇ…」

サラは窓の外に顔を向けると、しばらく視線を彷徨わせていた。

やがて、こちらに振り向くとしゃべり始めた。

「あれは10年前のクリスマス、プロポーズに贈られるはずだったものだと思うわ」

「はずだった?」

「ええ」

「なぜ、届かなかったんだ?」

「なぜなら、彼、ラーアルは、ポイントA-10で消えてしまったんですもの」

「A-10消失事件に、巻き込まれていたのか……」

サラは静かに、頷いた。

「彼の出身地は、サブドゥアそういう意味では、辻褄はあってるんだけどね」

サラは深くため息をつくとボソリとつぶやいた。

「誰が、なんのためにこんなことをしているのか確かめないとね」

「ラーアルの最後のクリスマスプレゼントか…」

「そうね」

「サラの為なら 一度くらいサンタになるのも、悪くない…か」

本心から出た言葉なのかわからない。

だが少し気恥ずかしくなり、目をつぶり意識を向こう側へ飛ばした。



サブドゥアは地方都市だが、それなりの大都市だ。

だが駅に降り立つと、さらに冷たい風が吹き抜けていた。

だだっぴろい構内だが、昇降する人影はまばらで、寒さから逃れようと誰もが急いでいた。

宅急便を取り扱った店へのメモを取り出し、行き交う人の一人を捕まえ道を尋ねると

駅前のストリート沿いで店はすぐに見つかった。

クリスマスのせいなのか元からこうなのか、店内は客でごった返していた。

担当者を呼び出してもらうと彼は少しめんどくさそうに、バックヤードから現れた。

「ええそうです…。確かに私が担当した荷物ですね。 だけどこんなことがある筈はないんだがなぁ…」

「まったく、記憶にはないと?」

「ご覧の通り、この時期はとんでもなく忙しいものですから」

「そのようですね」

店内は人の波が押し寄せていた。この店員も早く持ち場に戻りたそうで

「一日に送る宅配便も百や二百じゃないんですよ。 ほんとすいません もう、いいですか?」

としびれを切らせ、立ち去ろうとしていた。

それを寸前で断ち切り質問をした。

「最後にひとつだけ、この辺りにジュエリーアンジェって宝石店ありますか?」

「宝石店ならいくつもあるが、アンジェかぁ…聞いたことないな」

「そうですか、ありがとうございます」

これ以上は無駄だと判断し、店を後にした。

「手がかりなしかぁ」

サラが夜空を見上げながら、ポツリとつぶやいた。

見上げた夜空は蒼く濡れていた…。

  • ❤姫林檎❤

    ❤姫林檎❤

    2011/12/23 17:58:24

    早く見つかればいいけど。。。
    見つかったら見つかったで思考がぁぁっぁlw

  • みん♪

    みん♪

    2011/12/22 21:53:13

    差出人は分からなかったんですね^^;
    それとも分かっていても確かめに来たんでしょうか?