前回の死刑判決から早数年…。
2月20日、被告の上告が棄却され死刑が確定したこの事件。
長かった…本当に長かったですね。

当時18歳の少年で、その年齢故に死刑判決かどうかが難航した被告はもう既に30歳。
犯罪を犯さずにまともに働いていたら結婚し子供が居て、
職場でも中間管理職と呼ばれる位置に居てもおかしくない年齢です。
20代という人生で最も輝かしい時期を独房で過ごした彼は
何を学び、どんな成長を遂げたのでしょうか？それは第三者の私には分かりません。
少なくとも物理的には、比較的痩せ型だった少年を
歳相応の肉づきの中年男性に変える程の長い年月
生きながらえさせて貰っていた事は確かです。

今回の判決で久々にメディアに登場した
この”元少年”の被告と被害者遺族の本村さんを見たときに最も驚いたのは
その流れた年月の長さもさることながら、
まだ本村さんの年齢が30代前半だった事。
メディアに出てきた時の受け答えのあまりの堂々としたイメージから
もっと年齢が上のようなイメージでしたが、私と殆ど大差ない年齢で…。
事件が起こった当時はまだ二十代の青年だったのですね。
そうやってよくよく考えてみたら被告の”元少年”とはほんの数歳しか違わないんです。

当時は未成年の犯罪という点に焦点が置かれていて、
あまり実感としては湧かなかったけれど、
被害者遺族である本村さんと被告がこうして同じ三十代となった今、
改めて年齢を確認してみて本当に驚きました。
若くして彼の背負ってきたもの、戦ってきたものの大きさは計り知れないでしょう。
たった数年若く生まれただけなのに少年法という法に守られ、
そしてそんな事件と少年法に便乗、利用してまで
自分達の目的を達成しようとする死刑反対集団との戦い。
被害に遭った奥さんと娘さんを守る為に法律の専門家と渡り合うべくどれだけ勉強し、
それ以外にも世間の好奇の目や批判、色んな物と戦ったかは想像に難くありません。

勿論、この事件はショッキングな事件ではありましたが
世の中にはショッキングな事件は他にもありますし、むしろ毎日のように起きています。
それでもこんなにも長い年月を経ても、
この事件程人々の記憶に強烈に残っている事件を私は知りません。
大概はよくて数年で被害者以外の人々の記憶からは風化して消えていきます。
何故、この事件が人々の記憶から消えないのか。
それはやはり亡くなった妻と娘の為に命を懸けて
本村さんの戦う姿が鮮烈だったからに他なりません。
その原動力はどこから来ていたのでしょうか？
愛する妻と娘を一番幸せな時期に守ってあげられなかったという自責の念から、
その死後を全力で守ろうとしたのかもしれません。

事件が起きた当時、インタビューを受けた彼が
「（乱暴された事によって）妻が汚れたとかそんな事は思ってません」
というような趣旨の事を話しているのを見てすごく感銘を受けた事があります。
本村さんは例え自分が批判や誹りを受けようとも
亡くなった妻や娘に好奇の視線が向けさせないという
強い、強い意思表示だと私は感じました。
事実、この事件ではややもすれば好奇の目で見られがちな
婦女暴行事件という側面を持ちながらも、
正面きってそんな目で語る人は驚くほど少なかった（勿論皆無ではないでしょうが）と、
少なくとも第三者の目には映りました。
彼の強い意志がそれを許さなかったのだと思います。

それだけ命を懸けてこの事件と向き合い、戦っていた本村さん。
判決が出た後はどうなってしまうのだろう？燃え尽きてしまうのではないか？
と勝手ながらその後の彼の身の上を危惧しておりましたが、
数年前に入籍し、一緒に墓前を弔ってくださる方と一緒になられたとのこと。
だからと言ってこの事件によって受けた傷が癒えるわけでも
亡くなった奥さんや娘さんの事を忘れてしまえるわけではないけれど
それでも、本村さんが今後も前を向いて生きていく意思を持っている事を知り
心から嬉しく思います。

死刑判決に関しては、本村さん同様手放しに喜ぶ事は私もできません。
死んで当然、とか死んで償えなどと軽々しく言える程私は偉くもありませんし
本当にそんなことを言っていいのは神様だけです。
それよりも何よりもあまりに犠牲が多い事件でした。
善良な市民と未来があった幼子の二つの命が
こんな自己中心的な男1人の命一つで償えるとも思えません。
むしろ償える術などないからこその、
現時点で考えられる最も重い刑が科せられただけです。

それでも遺族の方々にとって、長く辛かった戦いの一つの区切りの指標として
この判決が出たことは何よりの救いになるでしょう。

本村さん、本当にお疲れ様でした。
どうぞ新しい伴侶の方と少しずつ幸せを取り戻してください。
そして、この判決がただの飾りだけで終わらない為にも、
法務大臣には早期の執行命令を望みます。