妄想小説其の二
事務所では社長と数人の同僚が背を丸めながら話しこんでいる。
「いつ見つかったんですか?」
「今朝な。萱浜に車あって・・・練炭だと」
「俺、もう嫌んなっちゃいましたよ・・・ケイスケさん、なんで・・・」
ハァ?
俺の耳、オカシイ・・?心臓が止まりそうだ。
社長がボソボソと話し続けた。
「おととい給料日だったろ。あれ全部スロットに突っ込んでな。
遺書もあった。あれ、相当借金あったって。随分追い込みもかかってたらしい」
嘘だ。オヤジのパチンコ通い、嫌ってた筈だ。
おとといって風邪じゃなかったんか・・・!?
俺は社長に挨拶もせずに事務所を飛び出した。
あいつのアパートに向かって車を飛ばす。
大体の住所は聞いていた。
考える事を辞めた頭の中とは関係無しに、左手は的確にギアを変えていく。
路肩に車を停め一気に階段を駆け登り呼び鈴を押す。反応は無い。
ドアを叩こうとして我に返った。
・・・何やってんだ俺。
階段に座り込んで煙草を取り出した。こんな時にガス切れ。
頭を抱えて下を向いていると階段を登る音が聞こえた。
「あれえ?慎也さんっすかァ?」
顔を上げると買い物袋を下げた圭輔が立っていた。
「おまっ・・・!!」
「お見舞い来るならちゃんと連絡してくださいよぉ。
分かってたら買い物頼んだのに。あ、よかったらどうぞ」
風邪はもう大分いいらしい。言われるがまま部屋に通され、炬燵に入った。
インスタントで悪いっすね、と出された珈琲を一口飲んだ後、
大きなため息が出てしまった。
「慎也さん?何で泣いてるんすか?」
あれ?俺・・・泣いてんのか!?
「良かった・・・圭輔がいて」
何言ってんだ俺。混乱しながらもその言葉に偽りは無かった。
良かった。どうやらケイスケ違いらしい。
死んだケイスケには申し訳ないが、今はっきりと解った。
「俺も慎也さんが来てくれて嬉しいっすよ?」
無邪気に微笑む圭輔の顔を、いつまでも眺めていたい。
俺は心から願っていた。 (了)
永
2012/12/05 15:11:57
いやーん❤
素敵ー。
こうでなくちゃ的なオチが、ほっぺたニマニマしちゃいましたよー。
自覚するしないのギリギリのラインがドキドキします。
こういうプラトニックなお話も好きで最初の頃はそういう作品だったのに、
いつの間にかいけないお姉様に唆されww
また書いてくださいね。
ゆさ
2012/03/28 21:50:09
ヱルさん
ありがとうございます(//▽//)
ノンフィクションと妄想をMIXして書いてみました。
友情と(腐)のギリギリを狙ったらこんな着地点に。
また「ちっちゃい物書きの神様見習い」が降臨したら書いてみますw
あるちゃ
ガテン系事務卒業記念でもある(笑)
ヱル
2012/03/27 14:48:19
良い短編でしたよ^^
まず、なにが良いって「短編」だから良いんです~♪
私は短編好きな奴です! 長編、書くのも読むのも苦手なんですw
書きものの醍醐味は、短い中にストーリーを組むことにあると思うんですよ。
その短いストーリーで読者の心を掴むことって、なかなか難しいものです。
主人公も気付かなかった友を大切に思う心の描写、良く書けてました^^
こういうの、また読んでみたいな♪
あるちゃ
2012/03/26 21:17:02
渋いね~>▽<
男臭くってたまらんす。
ゆさ
2012/03/24 21:57:09
Σ(´∀`;)なんでみんなコメント短いんだw
ももっち@
2012/03/24 20:19:47
いいねえー
ねむりねこ
2012/03/24 16:47:00
よかった・・・ホッとしました^^
すみれ
2012/03/24 10:46:16
うんうん 愛ですな
船越オブファイア
2012/03/24 03:45:26
アイですな