うみきょんの どこにもあってここにいない

うみきょん

日々のはざまについて、
地上でみた夢の記憶、
地中で見られた眠りのすきま、
絵画や小説、想像世界、花たちなどについて
静かに渡りを記述しています。

どこにもあってここにいない

小説/詩

今日は真昼から4時まで、外にいた。
暑かった。日射しがのったりと、
隠していても、くいこむようだった。
歩いているうち、
思考回路がだんだん、にぶくなってくるのがわかった。
街を現実として歩いていた、もうろうとしながら。
知った筈の道のほんの裏側を歩いただけで、
未知の空間にまぎれてしまったような、リアリティのなさが
歩いているわたしに混在しはじめていた。
道端で猫が現れる。枯れかけたホタルブクロの鉢植えが出現する。
知らない道を歩いていたはずなのに、突如として現れる見知った大通り。
なんども行き止まりに遭遇し、ようやく通じたと思ったら、
ずいぶん前に歩いた道だった…。
突然、猫が二階から鳴く。
暑さでしおれた鉢植え。
無言でいたのに、しゃべりすぎた後のように
喉がひりつく。
これらすべてが、リアリティがなかった。
幻想のなかをあるいているようだった。
猫を追おうとする。
その私をべつの私がみているような。
夢のなかのわたしをみるわたしのような。
でも、暑さをかんじているわたしも
たしかにいるのだった。
わたしはどこにいたのだろうか。
喉がひりついたのは、だれかと
夢のなかでしゃべったからではなかったか。

今日はほんとうに暑かった。