「愛」
「愛って何なんだろうね」
初夏の日差しがさんさんと降り注ぐ午後の川の土手。
短い丈の草の上に大の字に寝転がり、僕は恋人の、紗帆に聞いた。
紗帆も僕と同じように、手足を大きく伸ばしている。
「愛?」
「愛」
腕を瞼の上に乗せ、太陽を直接見ないようにしている紗帆。
それくらい、今日の日差しは強い。
僕は被っていた帽子で顔を覆った。視界が暗くなる。
それでも、紗帆が微かに笑っているだろうと、弾む声で予測できた。
「どうしていきなりそんなことを聞くの? 」
そうして、すぐ隣りから同じ調子の笑い声が届く。まるで、「何故そんな分かり切ったことを聞くの?」とでも言いたげだ。
一体何が可笑しいのだろう。僕には全く分からない。
「僕はいつも分からなくなるんだ。どうして君が僕みたいな平凡な男と付き合ったのかが」
紗帆は可愛い。
ショートカットのヘアスタイルは紗帆の快活さをよく表し、小柄な体からは予想できない身体能力を僕はつい最近知った。眼はいつも輝きに満ちていて、見ていて元気を貰う。小麦色の肌も、健康の証だ。
タンクトップにデニムの短パンというラフな格好も、紗帆は難なく着こなす。
二人が通った大学でも、紗帆はいつでも注目の的だった。
本当に、どうして紗帆のような魅力あふれる女性が、僕と恋をしているのだろう。
「質問に答えるわね。些細なきっかけであなたの隣でさっきのように笑い、こうして草むらで寝っ転がるのが楽しくて私はここにいる。
これが、私の、私たちの愛」
当然、こんな「愛」なんてそうそう無いだろう。
わざわざ、人目の付くところで日光浴だなんて。
それでも、それが僕たちの「愛」で。
納得して受け止める。それは勿論、これも「愛」だから。
夏の午後。日差しはまだ高い。