「夢」
きっと、これは、夢なのだ。
悪い悪い夢。
早く目を覚まさなくちゃ。
少女は後ろを振り向かずに、森の濃い霧の中を歩きだした。
それで正解。
霧が隠した、感情任せで起こしてしまった大きな罪は、少女の記憶からすっぽりと抜け落ちてしまっていたから。
今見たら、彼女は狂ってしまう。
けれども、真っ赤な血を纏うナイフと、
その隣にある亡骸は、
少女の意思に関係なくこれでもかというくらいその罪を語っていた。
しかし、深い森の中にある彼女の夢は、誰にも気づかれることはない。