✪マークは作り話でし

ブラボー

✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし

✪ 不思議屋

30代以上

私はまたこの店に来てしまった、
何とも風変りなこの店に。
「いらっしゃいませ、お気に召すままどうぞごゆっくり」
店主も変わっている、白髪なのに肌はツルツルしている。
私はたずねた、
「よく耳にするのですけど見たことのないものなんです」
「ほほ・・・それはどのようなものでしょう」
それは腹時計である。
人は皆、自らの腹のあたりにひとつの時計をもっている。
この時計じつにどうも中々正確な時計でありまして、
朝・昼・晩の三回確実に時を知らせてくれる。
それが見たくてやってきた。
店主は奥の棚から一つの時計を持ってきた、
「これです」
「これがあの腹時計ですか」
店主がこの時計の取扱説明をはじめた。
「腹時計はこの世の基準となる時間とは一切無縁です、
きわめて個人的であり、
きわめて自己中心的な時計なのです。
しかるべき時が来ると「ぐぅ」と音がします、
が、それは殿方が健全である証拠で。
しかし、
腹時計を普通の時計と思って甘く見るとひどい仕打ちにあいます」
「それはどんな」
「ぐぅ、の音もでなくなるということです」
なななななな・・・・なるほど。