フリージア

金狼の重圧…07

自作小説

 バタフライはミッド地区に足を運び、辺り構わず顔なじみのEM乗りに聞き込みをしていた。もちろん皆煙たがった。しかし、中にはバタフライがウルフを探しているということを面白がり協力的な人物もいた。
 「ウルフのことなんだが?」
 「どこにいるか知らないか?」
 「復活したって聞いて来てみたんだ」
 「仁王やフォックスまでやられて、後は俺しか残っていない」
 「俺もウルフとやりたいんだ」
 協力的な人物もいたにはいたが、聞き込みの成果は全くない。おもしろそうに頑張ってよと声援を送られてばかりだった。
 一見効果のない聞き込みに思うが、バタフライには考えがあった。こうやって自分の庭であるミッド地区で好き勝手に聞き込みをすれば、ウルフは面白くないはずだ。何か反応があると思っての行動だった。目に見える成果が無くても一概に落胆することはない、そう楽観視していた。 
 しかし、何一つ反応がなく2週間が経った。

 『ウルフは本当に俺のことを捜しているのか?』
 バタフライは疑問がわく。

 『俺を探してるんだろ?』
 そう言って、ウルフが自分の前に現れることを期待しているバタフライ。

 ウルフの気配を感じることなく、バタフライは今日もミッド地区を後にした。EMに乗り、少し走った後に振り向いた。
 「・・・・必ず見つけるぞ・・・」
 そう言うと、バタフライはまた飛ぶように走り去った。

 ミッド地区、とある施設内…
 「後1人だな・・・ウルフ」
 ウルフの友人ミカミは微笑んでいた。
 「・・・・・・」
 ウルフらしき男は何も答えなかった。
 ミカミは何も答えないことを確認し、部屋を出ていった。
 部屋の扉を閉めた瞬間、ミカミを待っていたかのように携帯が鳴る。内容はウエスト地区のバタフライがウルフを探し始めた事実だった。ミカミは少し笑った、がすぐに険しい顔に戻る。そして、通話相手にこう言った。
 「ウルフが復活したこと、もうだいぶ広まったな・・・無理も無い、あの3人が病院へ直行となればな」
 ミカミは建物から出て、今にも雨が降りそうな黒い空を見る。ミカミは続ける。
 「もう少し、泳がせておこう」
 「泳がせるのか?」
 「あぁ、楽しみはもう少し後に取っておく。ウルフもそれを望んでいる」
 煙草に火を付けようと思い、ライターを出したが火がつかない。そのライターをポケットに戻してそのままの煙草をくわえたまま何処かへ歩き出した。