YUKIEのきまぐれ日和

YUKIE

 気まぐれに、その日の出来事や、感じたこととかを書いていくつもりです。
 あと、別のブログで公開していた小説もUPしています。よかったら読んでください。

ハッピーアイスクリーム~後編~

自作小説

「きゃははははは!」
 それは、お父さんに高い高いをされて笑っている、小さい時の自分だった。
「これ・・・小さい時の・・・私・・・?」
 そして、次々と懐かしい思い出の場面が見えた。
 
 4歳の時、始めて大きなパフェを食べたこと。
 5歳の時、お兄ちゃんと一緒にお母さんにいたずらをして笑い転げたこと。
 6歳の時、妹が生まれたこと。
 小学2年生の時、四葉のクローバーを見つけたこと。
 小学4年生の時、理恵と小冒険したこと。
 小学6年生の時、絵のコンクールに入選したこと。
 中学2年の時、クラスのみんなと花火大会をしたこと。

「これはあなたの幸せだよ。」
 と、どこからか声が聞こえてきた。
「だ、誰!?」
 目の前に、2人の小さな女の子が現れた。
「え・・・ええ!?」
 結は驚いて二人を見つめた。
 1人はマーブル模様の服を着て、茶髪でポニーテールの女の子。もう1人はピンクの服を着て、赤毛のウェービーヘアーの女の子だ。
 背中に透き通る羽が生えているところを見ると、どうやらこの2人は妖精のようだ。。

「わたくしはストロベリー」
「あたいはマーブル」
「あなたが食べたのは」
「あたいたちが宿った」
『ハッピーアイスクリーム!!!』
 と、2人は手をつないで同時に言った。
「な、何!?ハッピーアイスクリームって?」
「だから言っただろ!」
「わたくしたちが宿ったアイスです。」
「あんたは運がいいんだよ。」
「このアイスを食べた方は」
「自分にとっての」
「幸せが」
「なにか」
「わかるんだよ!」
 そう言われても、結にはさっぱり意味がわからない。
「だ~か~ら~、さっきあんたが見たものが、あんたのとっての幸せってわけ。」
「さっきのって・・・」
 さっきのとは、つまり結が先ほど見た昔の思い出のことのようだ。
(確かに、どれもうれしいとか、楽しいとか感じたときの思い出だったけど・・・。)
「そしてこれからも」
「こんなことを」
「いっぱい」
「つかめると思いますよ」
「え!?あ、あのっ、ちょっと!?」
 と、2人の妖精は一瞬で消えてしまった。


 気が付くと、周りの景色さっきのバス停に戻っていた。
 隣にはボーゼンとした表情の理恵が立っている。


 帰りのバスの中で、結はさっきのことを理恵に話した。
 そしてなんと、理恵も結と同じ体験をしたという。
 理恵が見たのは、チョコミントアイスみたいな模様の服を着て、青い髪をショートヘアーにした妖精と、ブルーベリー色の服を着て、薄紫色の髪をおだんご頭にした妖精だったという。
 そしてその妖精たちも、結が聞いたこととまったく同じことを言っていたという。
 
 その時見たエピソードは―
 

 テレビに出ている歌手にあこがれていた自分。
 自分で歌を作ってファイルに収めていたこと。
 何度もオーディションに落ちて泣いていた日々。
 そして、結と受けたオーディションに受かり喜んで泣いた自分。

「あの見たものが、私たちの幸せだって言ってたよね。」
「うん・・・。理恵は、意味わかった?」
「う~ん、どうだろう・・・。ただ・・・、自分は歌が大好きだってことを、今まで忘れてたかなぁって言うのは感じた。」
「そっかぁ・・・。私もよくはわからないけど、ただ、あの時見た思い出は、どれもささやかなことだったけど、幸せだなぁって思えたことだったな。」



 あれから、十数年の月日が流れた。
「ママ~、早くお出かけしようよ!」
「はいはい、康太も千明も、もうちょっと待ってね。」
「おーい結、理恵さん今度ミュージカルの出演が決まったんだって!」
「総一郎ったら、そのことなら一昨昨日に本人から連絡きたでしょう?」
「え?ああ、そうだったな・・・。あははははは。」
「も~(笑)」

 理恵はシンガーソングライターとして活躍しており、最近ではドラマにも出るようになった。
 テレビで見る理恵はとてもいきいきとして、見ている自分も元気になれると結は思った。

 一方、結は芸能界を引退し、夫の総一郎、2人の子供、康太と千明の4人家族で、平凡な毎日を過ごしている。

「ねえ、パパ。今日アイス食べに行こうよ。僕、チョコレートとプディング味の食べたい!」
「お兄ちゃんのもいいなあ。でも千明、チョコバナナとバニラも食べた~い!」
「コラコラ、そんなに食べるとお腹こわすぞ。」
「ねぇ、パパとママは何のアイス食べたい?」
「そうだなぁ、パパは抹茶とオレンジかな?ママは?」
「う~ん、クリームチーズとメロンかな?」

 結はきっとこれが、あの妖精たちが言っていた、自分にとっての幸せなんだと思った。
(これからも、こんなささやかな幸せを、たくさんたくさんつかんで行こう。)