煙をかげば、死者から生者へと。
ベランダから原っぱが見える。男や男の家族、親戚と後で別の場所で落ち合うことになっているのだが、それまでの時間ひとりでその部屋にいるらしい。ベランダに座ってなにかしている。言葉でなにかをかいているのかもしれない。絵を描いているのかもしれない。つまり、そういうことをしているのだ。
そのうち原っぱの中央から煙がわきあがってくるのに気付く。煙のでる箇所をみると、四角い穴がふたつ開いている。火葬している煙だと気づく。煙がたなびいている。わたしのほうまで匂いがやってくる。死の匂いがわたしをつつむ。幸先が悪いなと一瞬思うが、これもまた受け入れなければと思う。男から電話がかかってくる。もう男のもとにいかなくてはならない。
こんどはマンションの一室。たぶん以前いた会社においてあった荷物を何回かにわけてとりにいっていたのだと思うが、最後にいったら、知らない女性たちがだいぶ整理をしていてくれて、わたしの分をとりわけておいてくれた。つかいかけの洗顔石鹸とかシャンプーとかそんなものばかりだ。そこにはわたしの妹のものもまじっていた。そこまでわけることができないし、かれらはわたしたちのことをしらないのだから、しかたないだろう、そうおもう。たとえ、なさぬ中の妹であったとしても。
わたしは、マンションの一室に、それらの荷物をとりにゆく。けれど、別の部屋に案内された。たくさんの人が集まっている。知らないと思った女性もふくめ(彼女たちは親しげだった)、男たちが数名、なにもない部屋で雑談していたが、彼らはみな、どうもわたしの高校時代の同級だったらしい。いわれてみれば覚えがあるようなきがするが、やはりあまり記憶がない。彼ら、とくに男たちは自分は変わったが、わたしはあまり変わらないという。
同級生たちから、うけた印象はほとんどない。けむりをのがれ、わたしは生へゆきつこうとする。せめてかんじようと。
畑がひろがっていた、そして海が、岬がちかいようだ、潮のかおりがする、だれもいない、ばしょをあるいている。それはわたしの自宅のちかくの景色だった。ゆめのなかでは。
この近辺に、むかしの男、今も交流のある(今は男と女の関係ではない)Tが別宅をもつときいたのだ。マンションの一〇三号室、百階になる。とりあえず、場所だけはさがしておこうとおもったから。そして、痛烈に彼に会いたいと思っていた。
またけむりのにおいがする。