ま、お茶でもどうぞ

蒼雪

日々感じたことを書いています。
なんとなく、徒然草。

「あまちゃん」放送記念小説

自作小説

 東京駅から新幹線でおよそ2時間半。
 私は、東北のある町に降り立った。ホームの中からすでに寒く、外はさらに寒風が刺さるようだった。これはもっと厚着してくればよかった。私は襟を立てながら、客待ちのタクシーに乗り込んだ。
 運転手にお願いして、噂のB級グルメを出す店に連れて行ってもらう。今回の旅はそれが目的だった。
「今、町をあげて祝祭ムードですよ。初の快挙ですから」
 運転手の誇らしげな言葉に、私はうなずいた。ここは全国的に有名なNABE-1(ナベワン)グランプリ発祥の町だからである。しかし第1回目から常に準優勝しかできず、主催者なのに毎年苦汁を飲んできた歴史があるのだ。
 それが初優勝なのだから、地元紙でも大きく取り上げて祝ったという。微笑ましくも涙ぐましい話題性にもつられ、私は噂の鍋を食べたくてしょうがなかったのだ。

 美味で有名だという食堂で、私はいよいよご当地メニューと対面した。
「東京からわざわざ? おいでぁんせ」
 食堂の女将がにこやかに笑顔を浮かべ、ほかほかと湯気の立つ鍋を私の前に置いた。
「これが大福鍋か」
 小ぶりの鉄鍋に地鶏とネギ、舞茸などの具材が醤油だしに浮かび、見た目ですでに温まりそうだ。
 しかし特筆すべきは、中央に浮かんだ巨大な大福だろう。
 キャッチコピーは、“地鶏スープに絶妙にマッチする甘い大福!”
「……これで今まで準優勝まで行ったのか」
 私はその事実にさまざまな疑いを抱きつつ、おそるおそる大福に箸を伸ばした。熱で溶けた餅がとろけたチーズのように伸びて、中からふっくらした粒あんが顔をのぞかせる。
 箸で切って口に運ぶ。すると、上品な鶏のだしと甘いあんこが意外なほどに舌になじみ、ついもう一口と後を引くうまさだ。地元産の具材もいい味を出していて、私はあっという間にたいらげていた。
「おいでぁんせました、東北」
 まるで外国人のようなセリフが口をついていた。すると女将がけらけら笑って、
「そういうどぎは、おいでぁんせましたって言わねぇんですよ。おいでぁんせってのは、よぐいらっしゃいましたって意味だす」
「ああ、そうですか。これは失礼」
 私も真っ赤になって笑った。ほかの客も「んだんだ」と一緒に笑っている。明らかに私と同じ観光客もだ。
 また、この町に来よう。笑顔の絶えぬ中、私は満たされた気持ちでそう思った。


                                                  了
~~~~~


4月1日から放送中の、NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」。
北限の海女にあこがれる女子高生の物語だそうです。

脚本が宮藤官九郎さんとのことで、かなり期待してました。
喜劇作家としては三谷幸喜と並ぶ天才と、私は勝手に思っております。

今の時期にこの東北地方がテーマとは、まさに大震災からの復興! とか、ガンバレ東北! みたいなあからさまな意図を感じるのですけども、面白ければそれでいいです。

前に放送されていた「純と愛」があまりに過酷な展開だったため、こういうはっちゃけたコメディこそ、みんな待っていたんじゃないでしょうかね。

作品の出来ですが、第一話から引き込まれました。
さすが官九郎節といおうか、テンポの良い展開で話に引き込まれました。

ヘンテコ顔の顔文字から始まり、関東地方の人には呪文に聞こえる方言の連発、そしてご当地メニュー「まめぶ」。

「まめぶ」の説明には爆笑してしまいました。

食べた途端首をかしげるアキに、
――微妙だろ?
――しょっぱさと甘さが緊急会議しているようだべ?

これ、岩手県での地元の人を招待した試写会でも大爆笑だったそうです。

蒼雪の住む県の一部の地方にも、「けいらん」というあんこ餅の入ったお吸い物がめでたい席に出されるそうです。
お吸い物に甘いあんこだぜ、どういうコラボレーションだよ。←俺もそう思う。

でも東北地方の人間にとっては、小豆と米、砂糖は最高のぜいたくだったんです。
北の方だから冷害もあって、米=凶作の危機にいつも見舞われていたからです。
江戸時代あたりに、どこだかの武士だったか藩主だったか、偉い人が「ここは不毛の地だ(米が育たないから)」と言ってしまったくらいですから。

そんなこともあってか、昔の人は汁物やお吸い物に団子やあんこ餅を入れるという斬新なアイデアを思い付いたのでしょう。
なんというか……あれです、豪華さをてんこ盛りにしたくて一緒にした? みたいな。

上の作品は、だいぶ前に千文字道場内で発表した小品ですが、我ながらみごとに東北魂が息づいていると思います。
作品に登場する大福鍋はオリジナルですが、頭の片隅でうっすらと「けいらん」がイメージされておりました。

甘いお茶請けを食べると、直後に漬物が欲しくなる。それが東北人の味覚なのです。

そんなわけで、「あまちゃん」これからも楽しみに見て行こうと思います。


#日記広場:自作小説

  • 蒼雪

    蒼雪

    2013/04/06 10:23:54

    観れましたか、そうですか、よかったです!^^
    第一話、再放送されましたかね?
    またそのうち、まとめて再放送されると思うので、見逃した方はそのときが狙い目ですね。

    家族団らん、楽しんでくださいね。良い週末をお過ごしください^^

  • ふうこ

    ふうこ

    2013/04/05 16:51:40

    「あまちゃん」見ました!!いいですねぇ~。
    録画予約したので、しっかり見ます~☆彡


    蒼雪さんの丁寧なコメントうれしかったです^^
    身支度袋のこととか書きたいけど、
    今から駅に旦那を迎えに行くので、また今度~☆彡
    ではでは、また(o・・o)/~

  • 蒼雪

    蒼雪

    2013/04/04 11:08:37

    ふうこさん、コメント感謝です。

    あはは、そう思っていただけたら書いた甲斐がありましたw
    でもいつかやっちゃうかもしれないですよね、どこかの地方で。まめぶ人気に乗じて。
    もしくは、こっそりどこかの地方でやってるかもしれないです。
    私は確認せずにこの作品を書いたので、わからないのですが。ミカン鍋もあるくらいだから、あるかもしれないですね、大福鍋。

    甘さとしょっぱさが緊急会議と言ってますけど、そういえば、昨今「塩スイーツ」が流行ってましたよね。
    しょっぱいジャガイモのスナックにチョコレートをかけたお菓子も出回ってますし。
    だから、汁物に甘い団子が?!という驚きは、案外全国に受け入れられるものかと。昔の人はすでにその組み合わせに気づいていたんですね。
    これ、売ったら売れるんじゃないですかね?w

    昔は砂糖が最高のおやつだった! は、ある意味名言ですね。それくらい貴重だったし。
    コンビニとかできれいなスイーツを見ると、なんて今は良い時代なんだと思いますよ。
    だって、昔の人は食べたくても食べられなかったじゃないですか。
    かつて王様や殿様しか食べられなかったものを、今はお金さえ払えば、どんなものでも食べることができる。
    とてもすごいことだと思います。
    それに気づいてからは、チョコレートひとつでも、ありがてぇなあと感謝しながら食べてますね^^

  • 蒼雪

    蒼雪

    2013/04/04 11:00:29

    軸さん、コメント感謝です。作品お読みいただいてありがとうございました^^

    おいでぁんせって言い方は、「おいでやんせ」「おんでやんせ」とも書き換えられるんですよね。
    ダイヤモンドを、ダイアモンドともいう、的な方言のニュアンスですねww

    方言は標準語(共通語)が変化したものが多いので、おいであんせは「おいであそばせ」が変化したんじゃないかなと思ってます。意味も同じだし。たぶんですがww
    でも東北地方の方言って、意外と雅な言葉から派生しているものが多い気がするんですよ。

    昔は方言や訛りが恥ずかしかったんですが、今では平気になりました。
    むしろ、方言(一部だけど)使える自分がバイリンガルみたいで誇らしいです。お国ことばを使いこなせる人に憧れます。
    この小説の主人公も、そういう感じで言葉を真似してみたかったんでしょう(笑)

    第一話、ほんとに笑わせてもらいました。袖が浜の歓迎看板、あれって本物ですよね。
    うらぶれた感じがなんとも…てっぺんに特産品のウニが乗っかってるとことか、東北の田舎ならではです。

    この顔文字(‘j’)/
    流行るかもしれませんw

  • 蒼雪

    蒼雪

    2013/04/04 10:46:53

    ピュア~さん、コメント感謝です。

    そうそう、1話目と3話目のパラパラマンガは、鉄拳さんが描いてるんですよね!
    オープニングで「アニメーション 鉄拳」って見たときは目を疑いましたが、第一話の三陸線の説明で登場した時は、その見事さに何度も巻き戻して見てしまいましたww
    彼の才能は芸術の方にあったんですねぇ。これからもいろいろ発表していってもらいたいです。

    まめぶ大好きなんですか!?(゜o゜)ww
    すごいなぁ、私はこのドラマで初めて見ましたよ。
    まめぶがいける口なら、「まめしとぎ」や「べこもち」なんかもいけそうですね。
    私はまめしとぎは苦手な方です、いや、達人が作るのはおいしいんですけど。
    家庭の味がもろに出るので、おいしくないのはほんとに不味くて^^;
    でも、達人が作ると、ふんわりした触感で豆も舌触りが良いんですよ。食わず嫌いはいけないなと思いました。

  • 蒼雪

    蒼雪

    2013/04/04 10:40:09

    じゅらさん、コメント感謝です。

    純と愛は、最近朝ドラにはまっている親父が毎日録画して観ているのを脇で見ていましたが、なんというハードな展開かと^^;

    脚本を書いたのは、一大センセーションを巻き起こした「女王の教室」や「GTО」を手掛けた方なんですが、この人の作り方は主人公に試練を与えまくることで、彼らの成長を描くというものです。

    この書き手の精神、蒼雪もすごく理解できるんです。いとしいキャラほどきついことを与えて、どういうリアクションで立ち上がるのか見てみたいという(笑)
    でも、いじめられっぱなしの主役がけなげに立ち上がる姿は尊い反面、朝っぱらからブルーな気持ちにさせられるのは、大半はいやだったでしょうねぇ^^;
    会議にかけられた内容だったんじゃないでしょうか。でもあえて敢行した印象がありました。
    過酷な展開でしたが、さまざまな試練を乗り越えて、ヒロインの純が研ぎ澄まされ、透き通った女性になった気がします(むしろそれが狙いだっただろう)


    地元料理の「けいらん」ですが、つるっとしたお餅の中に甘い小豆が入ってます。それを、具なしのおすましに浮かべた者です。
    食べたことはありませんが、味はおそらく、大福もちを口に入れた後、上品な味付けのめんつゆを飲んだ感じじゃないでしょうか?ww

    あまちゃんは、どこから見ても笑えてしまうので(HPの官九郎インタビューでは、一週間見逃すと話がわからなくなるとのこと)ぜひ見てけだっさいww

  • ふうこ

    ふうこ

    2013/04/04 01:13:43

    大福鍋、オリジナルでしたかぁ~!ほんとにあると思いましたよ^^
    けいらん、食べてみたいなぁ~~。。。
    大福鍋みたいな組み合わせ、ちゃんとは覚えてないけど
    ケンミンショーで何かあったような・・・。なんだったかなぁ~~><;

    昔はあんこがほんと贅沢だったこと、
    法事で親戚のおじちゃんが言ってました。
    今は、いろんなスイーツが簡単に手に入るから、
    私にとっては衝撃でした。
    月日がたって忘れかけてたので、蒼雪さんのおかげでまた思い出しました^^

  • 軸☆

    軸☆

    2013/04/04 00:59:04

    第一話から見とけば良かった!
    これから見てみようっと(*´∀`*)

    おいでぁんせました 東北^^
    小説の最後のあたり、なんともいいですね~☆

  • ピュア~

    ピュア~

    2013/04/03 15:39:36

    今回の朝ドラ 期待してます~~♪
    途中に出てくる パラパラ漫画?にも笑っちゃってるし^^

    まめぶ大好きです~~(関東人ですが・・^_^;)
    中にくるみがはいってるんですよね?(全部じゃないのかな?)

  • じゅら♪

    じゅら♪

    2013/04/03 13:58:54

    ((゚Θ゚*)ンダンダ♪

    純と愛・・・最後はほんっと がっくりしちゃって。ヾ(≧∀≦*)
    今回 見ようかどうしようか 迷い中だったのです。。。

    うんっ♪(・´Θ`・)ノ

    明日から やっぱり 見てみることにしようっとっ♪((o(*^Θ^*)o))ワクワク...♥ww

    お豆のお汁。。。(ヾノ・Θ・`) だめだめ。。。煮豆ちゃん 苦手なのでしたぁ。。。ㆀww