☆ちはやふる
この落語は東京の方が中心みたいです。上方でも演じる落語家がいるそうですが、いまだに聞いたことはありません。知ったかぶりの男と無教養な男の掛合漫才のような落語ですが、百人一首の勉強にもなるでしょう。
【スジ】
知ったかぶりをする隠居が、無教養な男に百人一首の意味を聞かれる。その歌というのが在原業平の「千早ふる神代もきかず竜田川からくれないに水くぐるとは」であった。
そこで、隠居はさっそく話をでっち上げる。
「竜田川と言うのは大関で、千早と言うおいらんに恋したがふられ、その妹の女郎の神代も言う事を聞いてくれないので、”千早ふる神代もきかず竜田川”だ。」
さすがにもっともらしい話になっている。さらに話は続き、
「そして、竜田川は傷心して相撲をやめて故郷に帰り、家業の豆腐屋になる。十数年後、女乞食がおからをくださいと言われてふと顔を見ると昔ふられた千早だった。竜田川は怒ってやらない、千早は井戸に身を投げて沈む。だから、”からくれないに水くぐるとは”だ。」
よくぞここまで話をでっち上げるものであるが、男から一つだけ質問がある。
「では最後の”とは”はどういう意味ですか?」
「とはは千早の本名だ」
※和歌の意味は次のようなものです。
「神の時代からこんな事は聞いたことがない、竜田川が紅色に染まってしまうなんていうことは」(「千早ふる」は「神」に係る枕詞で特に意味はありません)