フリージア

金狼の重圧 『エデン編』…6

自作小説

オアシスシティ、第7高速道路…夕暮れ時…

金色のEMが静かに速度を上げていた。

 このオアシスシティは都会の幻想からかけ離れており、地方議会では自然を大切にする政策を推し進めている。メトロポリスのような高層ビルが立ち並ぶコンクリートジャングルではない。
 高速道路の配置も少なく、EM乗りがいないわけではないが、それほど跋扈する土地柄ではない。本格的なレースもそれほど多くないところだった。
 なので金色のEMの周りには他の車両はおらず、彼の独壇場となっていた。
 それを知ってか知らずか、ここを復活の地、根城と決めたのは彼の判断ミスだった。

 本来なら邪魔するものは誰もいないと言うのは気持ちがいいものだ、だがその男の気持ちは晴れない。先ほど言った判断ミス、考えていた思惑とはかなりかけ離れてしまっていたからだ。

 『何故だ?なんで誰も来ないんだ?』

 速度と反比例するが如く、彼の不安は募る。

 『この金色のEMに乗れば、誰かが気づいてくれると思っていた。なのに…何故に誰も来ない?俺は無視されているのか?この金色のEMは伝説になっていたのではないのか?』

 伝説など言う言葉はあてにならないものだ…そう思うとともに速度は落ちていく。

 『誰もが伝説を語り継ぐとは限らないと言うことか…いや、伝説と言うものは語り継がなくても自然的に残存していくものだろうに』

 彼はここで判断を誤っていたことに気がつく。やはり派手な動きをしなければならないのか、だがメトロポリスにはまだ行きたくない。
 進展があるとは思えないが、もう少しだけここに…

 高速道路の出口が見える、もう少しだけオアシスシティに留まることに決めた彼は、静かに一般道路へと降りて行った。